こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである日本郵政(株)【6178】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。
・バリュー投資の7つの基準に沿った日本郵政の評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・日本郵政は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。
日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株はどれか?
を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。
日本郵政(株)【6178】 の基本情報
・設立年月日 2006年1月23日
・上場年月日 2015年11月4日
・業種 サービス業
・特色 日本郵政グループの持株会社。主要子会社に日本郵便、ゆうちょ銀、かんぽ生命。銀行に利益依存。
・資本金 3兆5,000億円
・従業員数 (単独)1,596人 (連結)231,193人
・株価 1,309円(2023.11.26)
・単元 100株
・決算 3月末日
日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険等からなる日本郵政グループの持株会社で、グループの経営戦略策定を行っています。
日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険などの傘下の事業会社を通じて郵便・物流事業、金融窓口事業・銀行事業、生命保険事業などを行っており、USPS、ドイツポストに次ぐ世界第3位規模の郵便事業体です。
郵政民営化で発足し、現在は総務省が所管しています。
郵政ネットワークの安心、信頼を礎として、民間企業としての創造性、効率性を最大限発揮しつつ、お客さま本位のサービスを提供し、地域のお客さまの生活を支援し、お客さまと社員の幸せを目指します。また、経営の透明性を自ら求め、規律を守り、社会と地域の発展に貢献します。
日本全国の地域に根差した約2万4千の郵便局ネットワークを強みとし、「進化するぬくもり。」というグループ共通のキャッチコピーを掲げ、「ぬくもり」と共に時代にあわせて商品・サービスを進化させることで、これまで以上に、顧客と地域に信頼される郵便局ネットワークに成長していくことを目指されています。
ではここからは、日本郵政(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
サービス業100社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 4兆3373億円(3位) |
売上高 | 11兆1385億円(1位) |
営業利益 | -(-位) |
純利益 | 4310億6600万円(1位) |
営業利益率 | -%(-位) |
純利益率 | 3.9%(60位) |
総資産 | 295兆9104億円(1位) |
負債 | 281兆2309億円(1位) |
サービス業の中で売上高、総資産とも抜けた1位。利益率は低めで、純利益率は3.9%の60位。郵政民営化によって生まれた文句なしの巨大企業です。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「流動資産が流動負債の2倍以上であること」。 また、②「固定負債が純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:1兆4591億円
流動負債:172億7700万円
固定負債:1199億9900万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 84.45倍で基準達成、
②は、固定負債1199億円 < 純流動資産1兆4418億円 で基準達成となり、
流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も低く、極めて健全ですね。基準達成です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2017年に赤字があります。日本郵便を通じて2015年に6200億円で買収したオーストラリアの物流子会社について、ブランド価値を示す「のれん」を一括償却した影響が響いたとのこと。残念ながら基準未達です。
年度 | 純利益 |
2014年3月 | 4790億7100万円 |
2015年3月 | 4826億8200万円 |
2016年3月 | 4259億7200万円 |
2017年3月 | -289億7600万円 |
2018年3月 | 4606億2300万円 |
2019年3月 | 4794億1900万円 |
2020年3月 | 4837億3300万円 |
2021年3月 | 4182億3800万円 |
2022年3月 | 5016億8500万円 |
2023年3月 | 4310億4500万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
過去10年のIR情報を確認すると、(直近の3年平均 – 最初の3年平均 ) / 最初の3年平均 × 100 = +14.5%となり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2014年3月 | 106.46円 | |
2015年3月 | 107.26円 | 3年平均:103.7円 |
2016年3月 | 97.26円 | |
2017年3月 | -7.04円 | |
2018年3月 | 112.97円 | |
2019年3月 | 118.57円 | |
2020年3月 | 119.64円 | |
2021年3月 | 103.44円 | |
2022年3月 | 131.93円 | 3年平均:118.7円 |
2023年3月 | 120.82円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、毎年しっかり配当が出ています。利回りも悪くないですね。基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2011年3月 | 8.53円/株 | -% |
2012年3月 | 8.41円/株 | -% |
2013年3月 | 8.57円/株 | -% |
2014年3月 | 9.67円/株 | -% |
2015年3月 | 11.13円/株 | -% |
2016年3月 | 25円/株 | 1.66% |
2017年3月 | 50円/株 | 3.58% |
2018年3月 | 57円/株 | 4.45% |
2019年3月 | 50円/株 | 3.86% |
2020年3月 | 50円/株 | 5.91% |
2021年3月 | 50円/株 | 5.07% |
2022年3月 | 50円/株 | 5.57% |
2023年3月 | 50円/株 | 4.64% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PERが15倍以下であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは18.76倍であり、基準未達です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBRが1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.44倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も8.25で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高11兆1385億円 |
②財務状況 | ◎ | 文句なし |
③収益安定性 | △ | 2017年赤字 |
④収益成長性 | △ | +14.5% |
⑤配当 | ◎ | 利回り4.64% |
⑥株価収益率 | △ | 18.76倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.44倍 |
収益安定性/成長性と株価収益率の3項目で基準達成となり、
日本郵政(株)は割安株には該当しません!
という結果となりました。
2017年の赤字はともかく、成長性がちょっと物足りないですね。あとは株価も少し高めです。
最大の強みである郵便局ネットワークにより、グループ内で一体的なサービスを提供していくとともに、これまでになかったグループ外の多様な企業等との連携を行うことで、地域において生活するお客さまが、安全・安心で、快適で、豊かな生活・人生を実現することを支えいく。
日本郵政の最大の課題は金融事業に依存する構造からの脱却。日本郵政の傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命の2社の保有割合を段階的に下げていく中で、この2社からの手数料収入で郵便事業を支える現在の構造を見直していく必要があります。
民間企業である以上、今後投資家を意識した効率的な経営が一段と求められてくることになりますし、全国規模で一律に事業を行うユニバーサルサービスを維持しつつ、収益力を高める具体策が望まれますね。今後に期待です。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
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