
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである川崎重工業(株)【7012】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った川崎重工業(株)【7012】 の評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・川崎重工業(株)【7012】は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


川崎重工業(株)【7012】 の基本情報
・設立年月日 1896年10月15日
・上場年月日 1949年5月
・業種 輸送用機器
・特色 総合重機大手。旅客機分担品や鉄道車両、大型2輪に特長。自衛隊の潜水艦、航空機も担う。
・資本金 1,044億円
・従業員数 (単独)13,381人 (連結)36,587人
・株価 2,890円(2022.11.16)
・単元 100株
・決算 3月末日


川崎重工は、19世紀の明治時代、東京築地の川崎築地造船所に端を発し、大正時代の第一次世界大戦による造船活況、そして世界大恐慌、昭和時代の第二次世界大戦、戦後の高度成長期と日本の近代史・産業史とともに存続してきた総合重機械企業です。
船舶、鉄道車両などの輸送用機器事業、コージェネレーション、エネルギープラントなどのエネルギー事業、油圧機器、産業用ロボットなどの産業用設備事業、モーターサイクル、オフロード四輪車などのレジャー事業、製造する製品は多岐にわたっています。
自衛隊の潜水艦や航空機、ミサイルの製造も行う国内有数の防衛産業でもあり、防衛装備受注金額では2015年度の防衛中央調達額で三菱重工業を抜いて日本第1位、世界第28位に位置しています。
グループミッションは「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する”Global Kawasaki”」広汎な領域における高度な総合技術力によって、 地球環境との調和を図りながら、豊かで美しい未来社会の形成に向けて、新たな価値を創造することを目指されています。
また、2030年に目指す将来像としてグループビジョン2030「つぎの社会へ、信頼のこたえを~Trustworthy Solutions for the Future~」を制定し、今後注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、より成長できる事業体制への変革を目指されています。
ではここからは、川崎重工業(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
輸送用機器93社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 4367億6600万円(14位) |
売上高 | 1兆5008億円(13位) |
営業利益 | 458億500万円(15位) |
経常利益 | 299億3400万円(18位) |
純利益 | 218億100万円(18位) |
営業利益率 | 3.1%(53位) |
純利益率 | 1.5%(63位) |
総資産 | 2兆2468億円(11位) |
負債 | 1兆7090億円(10位) |
輸送用機器の中で売上高は13位、総資産は11位。利益率は低めで、純利益率は1.5%と63位。日本を代表する総合重機メーカーの一社であり、事業規模は文句なしです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:1兆3820億800万円
流動負債:1兆1540億3200万円
固定負債:5550億900万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.20倍で基準未達、
②も、固定負債5550億900万円 > 純流動資産2279億7600万円 で基準未達となり、
よって、流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も高いですね。基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2021年に赤字がありますね。新型コロナの影響で、民間機を中心に航空宇宙システム部門の収益が大幅に悪化したことが響いたそう。残念ながら基準未達です。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | 308億6400万円 |
2014年3月 | 386億100万円 |
2015年3月 | 516億3900万円 |
2016年3月 | 460億4300万円 |
2017年3月 | 262億400万円 |
2018年3月 | 289億1500万円 |
2019年3月 | 274億5300万円 |
2020年3月 | 186億6200万円 |
2021年3月 | -193億3200万円 |
2022年3月 | 126億3800万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
IR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が241.5円、直近の3年平均が23.8円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = -90.1%となり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | 184.61円 | |
2014年3月 | 230.9円 | 3年平均:241.5円 |
2015年3月 | 308.91円 | |
2016年3月 | 275.61円 | |
2017年3月 | 156.86円 | |
2018年3月 | 173.09円 | |
2019年3月 | 164.34円 | |
2020年3月 | 111.72円 | |
2021年3月 | -115.73円 | 3年平均:23.8円 |
2022年3月 | 75.51円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、惜しくも2021年が無配であり、基準未達です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 30円/株 | 1.16% |
2011年3月 | 30円/株 | 0.82% |
2012年3月 | 50円/株 | 1.98% |
2013年3月 | 50円/株 | 1.69% |
2014年3月 | 60円/株 | 1.58% |
2015年3月 | 100円/株 | 1.65% |
2016年3月 | 120円/株 | 3.69% |
2017年3月 | 60円/株 | 1.78% |
2018年3月 | 60円/株 | 1.74% |
2019年3月 | 70円/株 | 2.56% |
2020年3月 | 35円/株 | 2.23% |
2021年3月 | 0円/株 | 0% |
2022年3月 | 40円/株 | 1.8% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは10.76倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.90倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も9.68で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高1兆5008億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | △ | 2021年赤字 |
④収益成長性 | × | -90.1% |
⑤配当 | △ | 2021年無配 |
⑥株価収益率 | 〇 | 10.76倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.90倍 |
財務状況と収益安定性/成長性、配当の4項目で基準未達となり、「川崎重工業(株)は割安株に該当しない」という結果となりました。流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も高く、赤字あり、成長性もマイナス、無配もあり、となると厳しいですね。
川崎重工では、当面は2021年度に過去最高益を記録したモーターサイクル&エンジン事業と、引き続き好業績を続けている精密機械・ロボット事業などの量産系事業が全社の収益を支える見込みであるものの、その後は国際線を含む航空需要の本格的な回復に伴い、航空宇宙システム事業をはじめとする受注系事業の収益が安定的に拡大が見込めるとのこと。
今後は、水素事業や医療ロボット事業、近未来モビリティ等をはじめとする新規事業を収益の柱とし、安定した成長軌道を描くことを目指すそうで、成長シナリオの実現のため、モノ売りからコト売りへのシフトなど、ビジネスモデルの見直しにも取り組み、高収益体質を実現していくとのこと。
三菱重工と同様、日本を代表する機械メーカーとして、今後の改善と成長に期待したいものです。
というわけで現時点では、
「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、
・コムシスホールディングス【1721】
・積水ハウス【1928】
・宝ホールディングス【2531】
・SUMCO【3436】
・東ソー【4042】
・日本ガイシ【5333】
・アマダ【6113】
・太陽誘電【6976】
・日東電工【6988】
の9社となりました。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




👇👇👇ブログランキングに参加中 👇👇👇
👇押していただけると励みになります 👇
コメント