こんにちは、なみです。
今回は2020年4月までの最新実績に基づき、米国インデックス株式ETFからVT,VTI,VOO,VUG,QQQ,VIG,VWOの7銘柄、高配当株ETFからVYM,HDVの2銘柄、債券ETFからAGG,LQD,HYGの3銘柄の計12銘柄を取り上げ、2011年3月から2021年4月までの約10年間のトータルリターンを比較します。
いずれも米国を代表するETFであり、それぞれ特長のある優秀な銘柄ばかりです。第3回とほぼ同銘柄ですが、運用実績の短いSPYDのみ今回は評価対象から除外しましたが、前回同様、トータルリターンだけでなく、元本と配当それぞれの推移や再投資の有無による違いなど、様々な観点からパフォーマンス比較を行っています。
各銘柄の特徴だけでなく、値動きや配当の時系列データ、最終的なトータルリターンまで、様々な切り口から比較していますので、そろそろ投資信託だけでなく、米国ETFに挑戦にしてみようという方や、米国ETFに興味はあるんだけど、どの銘柄に投資したらいいのかわからない!という投資初心者の皆さんにとって、非常に参考になる内容ではないかと思います。
また前回の5年間データと比較すると、運用期間が長くなった分、銘柄ごとの特徴が際立ったように感じます。コロナショック前後の濃密な期間が含まれている上、ごく最近のダウ、ナスダック、S&P500の最高値更新の実績も含めた検証ができていますので、インデックスと高配当株、債券ETFそれぞれが暴落時に受ける影響やその後の回復スピードなど、パフォーマンスの違いがイメージいただけると思います。よろしければご覧ください。
結論
いつも通り10年間の”再投資あり”トータルリターンの発表です。
2011年3月~2021年4月における配当再投資ありでのトータルリターンは、以下の通りとなりました。
なお、計算簡略化のため、購入手数料や為替手数料、売却時に発生する税金は無視していますので、実際のリターンはもう少し低くなります。
相変わらずグロース株ETFがずば抜けた強さを示し、QQQが615%で1位で、VUGが455%で2位となりました。ナスダック100のグロースとはいえインデックス投資を10年で6倍ってすごくないですか?
続く3位はVTI。VTIはVTと並列で扱われることがことが多いですが、リターンの面では大きく差があり、VTIがVTを119%も上回ることがわかりました。また、前回の5年間と同様、VOOすら上回ったのは意外でした。一方、VTはリターン面では高配当ETFよりも下回る結果となりました。
あと、前回の5年間との大きな違いとしては、中国株などを対象とする新興国株ETFであるVWOが10年リターンでは債券ETFのLQDやHYGをも下回る結果となりました。GPDでは世界2位の中国であっても株式市場ではまだまだ新興国扱いであり、投資対象としての成長性という点では課題がありそうです。
高配当株ETFはいずれもグロースETFに劣る結果となりましたが、VYMで296%、HDVで248%なのでVOOの352%より少し劣る程度ながらキャッシュフロー面では充実することを考えると、善戦しているといえるのではないでしょうか。この辺りは最近、バリュー株のパフォーマンスが高いことが良い方向に作用した結果と考えます。
債券ETFでは、LQD > HYG > AGGの順となり、最も安定性に優れるAGGが今回も最下位という結果となりました。ここは致し方ないところですね。
では、この結論に至るまでの調査内容を順番にご紹介したいと思います。
銘柄紹介
まず、今回比較した12銘柄について簡単にご紹介します。
インデックス/グロース株ETF
インデックス/グロース株ETF代表は、VT,VTI,VOO,VUG,QQQ,VIG,VWOの7銘柄です。
VT
正式名称:バンガード・トータル・ワールド・ストックETF
インデックス:FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(米国を含む先進国および新興国約47ヵ国の大型・中型・小型株約8,000銘柄で構成される指数)
資産総額:175億ドル
経費率:0.08%
VTI
正式名称:バンガード・トータル・ストック・マーケットETF
インデックス:CRSP USトータル・マーケット・インデックス(米国株式市場の投資可能銘柄のほぼ100%をカバーする指数)
資産総額:2040億ドル
経費率:0.03%
VOO
正式名称:バンガード・S&P500 ETF
インデックス:S&P500指数(米国で時価総額の大きい主要500社で構成する時価総額加重平均型の株価指数)
資産総額:1778億ドル
経費率:0.03%
VUG
正式名称:バンガード・米国グロースETF
インデックス:CRSP US Large Cap Growth Index(1株あたり利益の将来の成長率、過去3年間の成長率、1株当たり売上の過去3年間の成長率、総資産に対する投資比率および、総資産利益率より算出される指数)
資産総額:668億ドル
経費率:0.04%
QQQ
正式名称:インベスコQQQトラスト・シリーズ1
インデックス:ナスダック100指数(ナスダックに上場する、金融銘柄を除く、時価総額上位100銘柄の時価総額加重平均によって算出される株価指数)
資産総額:1549億$
経費率:0.2%
VIG
正式名称:バンガード・米国増配株式ETF
インデックス:NASDAQ USディビデンド・アチーバーズ・セレクト・インデックス(10年以上連続して増配の実績を持つ米国普通株で構成される指数)
資産総額:518億$
経費率:0.06%
VWO
正式名称:バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF
インデックス:FTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックス(世界の新興諸国の大型株・中型株・小型株をカバーする指数)
資産総額:742億$
経費率:0.1%
高配当株ETF
高配当株ETF代表は、VYM,HDVの2銘柄です。
VYM
正式名称:バンガード・米国高配当株式ETF
インデックス:FTSEハイディビデンド・イールド指数(平均以上の配当を出す普通株で構成される株価指数)
資産総額:312億ドル
経費率:0.06%
HDV
正式名称:iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF
インデックス:モーニングスター配当フォーカス指数(財務の健全性が高く、持続的に平均以上の配当を支払うことのできる質の高い米国籍企業75銘柄で構成される株価指数)
資産総額:60億ドル
経費率:0.08%
債券ETF
債券ETF代表は、AGG,LQD,HYGの3銘柄です。
AGG
正式名称:iシェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF
インデックス:ブルームバーグ・バークレイズ米国総合債券インデック ス(米国の投資適格債券市場全体における銘柄から構成される指数)
資産総額:860億ドル
経費率:0.04%
LQD
正式名称:iシェアーズ iBoxx 米ドル建て投資適格社債 ETF
インデックス:Markit iBoxx米ドル建てリキッド 投資適格指数(米ドル建ての投資適格社債で構成される指数)
資産総額:460億ドル
経費率:0.14%
HYG
正式名称:iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF
インデックス:Markit iBoxx米ドル建てリキッド ハイイールド指数(米ドル建ての高利回り社債で構成される指数)
資産総額:223億ドル
経費率:0.49%
計算条件
以下の条件でパフォーマンスを算出しました。
・検証期間は、2011年3月をスタートとし、2021年4月までとした。
・2011年3月1日に1万ドルを一括投資したと仮定した。
・各月の基準価格は、その月の1日の終値とした。
・配当を再投資する場合、配当受け取り直後にその月の基準価格で全額を再投資したものとした(小数点以下の口数でも購入できるものとした)。
・配当に対し、日本で20.315%が課税されたものとし、残りを受取額とした(米国での現地税10%は年末調整ですべて取り戻したものと仮定)。
・購入手数料と為替手数料は無視した。
元本の推移
2011年3月に1万ドルを一括投資したときの、元本の推移は以下の通りとなりました。
元本については、QQQ >> VUG >> VTI > VOO > VIG > VYM > VT > HDV > LQD > VWO > AGG > HYG の順になりました。
1位のQQQは今回もダントツの伸びを示しています。2017年あたりから頭一つ抜け出ており、その後もトップを独走しています。2位はVUG。2018年頃から徐々に抜け出し、3位以下には大きな差をつけています。上位2銘柄は特にコロナショック以後の回復度合いが大きいです。
3位グループは団子状態で、VTIとVOO,VIGの順ですがあまり差はありません。VYMとVT、HDVがそれに続く6,7,8位で、米国のみを投資対象としたインデックス系とは少し差のある結果となりました。
債券ETFのAGG,LQD,HYGはほぼほぼ原点のままであり、債券ETFという性質上、元値の値上がりは期待できないですね。VWOも10年間で価格の伸びがほとんどなく、元本に変化がありません。
累積配当金の推移
次に、2011年3月に1万ドルを一括投資したときの、累積配当金の推移は以下の通りとなりました。
累積配当金は、HYG > HDV > VYM > LQD > VIG > VTI > VOO > VT > AGG > VWO > VUG > QQQ の順となりました。
5年間検証と同様、意外にも債券ETFのHYGが累積配当金でトップです。ハイイールド社債ですのでやはりハイリスクハイリターンということでしょうが、高配当株ETFをも超える配当が得られています。
続く2位以降は高配当株ETFがHDV,VYMの順で入り、イメージ通りの結果です。4位のLQDも健闘しています。
インデックスETF系では、配当面ではVIGとVTI,VOO,VTの順になりました。いずれも配当の印象はないですが、そこそこの配当が頂けるようです。AGG,VWOはこれらに続く水準となっています。
最下位2つのVUGとQQQはグロースにパラメータを全振りしている分、配当ではどうしても見劣ってしまいます。
配当再投資しないときのトータルリターン
配当を再投資しなかったときの累積配当+評価額の推移は以下の通りとなります。
配当を再投資せずそのまま受け取った場合、その累積配当額と元本評価額の推移は、
QQQ > VUG > VTI > VOO > VIG > VYM > HDV > VT > LQD > HYG > VWO > AGG の順となりました。
やはり、グロース株系 > インデックス株系 > 高配当株系 > 新興国株 ≒ 債券系 の順ですね。やはりリターンを重視するのであれば、配当よりも成長性が効くようです。
配当再投資したときのトータルリターン
次に、配当をすべて再投資した場合の評価額の推移は以下の通りとなりました。
配当をすべて再投資した場合、その累積配当額と元本評価額の推移は、
QQQ > VUG > VTI > VOO > VIG > VYM > HDV > VT > LQD > HYG > VWO > AGG の順となりました。これまでと同様、再投資なし時と順位は全く変わりませんでした。
正直、配当再投資がトータルリターンに及ぼす効果はもう少し大きいと思っていたのですが、それよりもどれだけETFの価格が成長するかによってトータルリターンが変わるという結果になりました。
20年、30年といったもっと長期間であればもう少し差があるのかもしれませんが、10年程度ではそこまでの差は出ないようです。
そういう点では、必ずしも配当再投資にこだわる必要はないのかもしれません。それぞれの資金やキャッシュフローの状態に応じて、配当を生活資金に回してもリターン面への心配はなさそうです。
まとめ
以上、米国ETFのパフォーマンス対決として、日本でも人気のETF12銘柄について、約10年間のトータルリターンを比較してみました。
今回の検証結果をまとめると、下表の通りとなります。
一通り検証してみて思ったのは、相変わらずグロース株ETFが強いということ、特にQQQは10年で6倍のリターンが得られており、インデックス系や高配当株とはパフォーマンス面で大きく差があることが確認できました。
ただやはりグロース株は高PERであることに伴い、債券利回りの影響を大きく受けてダウやS&P500などと比べると、どうしても価格変動は大きいというデメリットはありますが、私自身のポートフォリオとしては、S&P500系のインデックスを中心に、QQQやVUGのようなグロース株もしっかり保有していこうと考えています。
VYMやHDVのような高配当株ETFについては、その多くを占めるバリュー株銘柄がある程度の価格の回復が進んできたこともあり、今からさらに高配当株ETFに投資するのは厳しい気がしますので、しばらく現状でホールドし、若干の値上がりに期待しつつ、高配当の恩恵を享受したいと思います。
以上、皆さんのご参考になれば幸いです。
*関連リンクです
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