
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つであるJ.フロント リテイリング(株)【3086】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿ったJ.フロント リテイリング(株)【3086】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・J.フロント リテイリング(株)【3086】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


J.フロント リテイリング(株)【3086】 の基本情報
・設立年月日 2007年9月3日
・上場年月日 2007年9月3日
・業種 小売業
・特色 大丸松坂屋百貨店が主力。テナント導入積極化。商業施設のパルコやギンザシックスも傘下。
・資本金 319億円
・従業員数 (単独)138人 (連結)5,589人
・株価 1,124円(2022.6.19)
・単元 100株
・決算 2月末日


J.フロント リテイリンググループは、2007年9月に株式会社大丸と株式会社松坂屋ホールディングスが経営統合して発足し、百貨店業等の事業を行う子会社及びグループ会社の経営計画・管理並びにそれに付帯する業務を事業内容としています。
「百貨店事業を核とした、質・量ともに日本を代表する小売業界のリーディングカンパニーの地位確立」をビジョンに掲げ、百貨店事業は、全国主要都市に「大丸」「松坂屋」を13店舗、またSC事業でもショッピングセンター「PARCO」を18店舗展開し、両事業を合わせたグループ全社売上収益に占める割合はおよそ73%となっています。
その他にもデベロッパー事業、決済・金融事業、卸売業などを展開しています。
百貨店とショッピングセンターという2つの異なる顧客層、小売業態をグループ内に保有し、互いのノウハウ・資産を活用し、シナジーを創出できるという強みを持ち、全国主要都市にバランスよく配置された店舗資産を将来の成長基盤に、百貨店ビジネスモデルの転換を進められています。
ではここからは、J.フロント リテイリング(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
小売業347社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 2944億8800万円(26位) |
売上高 | 3314億8400万円(42位) |
営業利益 | 93億8000万円(57位) |
経常利益 | 61億9000万円(91位) |
純利益 | 43億2100万円(81位) |
営業利益率 | 2.8%(166位) |
純利益率 | 1.3%(226位) |
総資産 | 1兆1929億円(7位) |
負債 | 8307億8700万円(6位) |
小売業の中で売上高は第42位。総資産も第7位で日経225企業の小売業の中ではトップレベルの資産額です。他方で利益率は営業利益率が2.8%で業界166位とかなり低めながら事業規模は文句なしのレベルです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2022年2月期の決算短信では、 J.フロント リテイリングの流動資産は234,884百万円、流動負債は347,413百万円、固定負債は483,373百万円なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 0.68倍で基準未達、
②は、固定負債483,373百万円 > 純流動資産-112,529百万円 で基準未達となり、
よって、流動/固定いずれの負債の比率も高く、基準未達です。
そして同じく百貨店業を営む三越伊勢丹ホールディングスとうり二つですね。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
J.フロント リテイリングの業績を確認すると、2021年2月に赤字があり、残念ながら基準未達です。コロナ禍による大幅減収に加えて、緊急事態宣言による休業に伴う固定費の振替、津田沼パルコや所沢パルコの閉店決定に関する費用などがかさんだためとのことです。確かに一時は軒並み休業してましたもんね。
年度 | 純利益 |
2013年2月 | 121億8300万円 |
2014年2月 | 315億6800万円 |
2015年2月 | 199億6700万円 |
2016年2月 | 263億1300万円 |
2017年2月 | 270億5200万円 |
2018年2月 | 284億8600万円 |
2019年2月 | 273億5800万円 |
2020年2月 | 212億5100万円 |
2021年2月 | -261億9300万円 |
2022年2月 | 43億2100万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
J.フロント リテイリングのIR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が80.2円、直近の3年平均が-0.8円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = -101.0%であり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2013年2月 | 45.44円 | |
2014年2月 | 119.55円 | 最初の3年平均:80.2円 |
2015年2月 | 75.66円 | |
2016年2月 | 100.42円 | |
2017年2月 | 103.43円 | |
2018年2月 | 108.92円 | |
2019年2月 | 104.55円 | |
2020年2月 | 81.18円 | |
2021年2月 | -100.03円 | 直近の3年平均:-0.8円 |
2022年2月 | 16.5円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
J.フロント リテイリングのIR情報を確認すると、 毎年しっかり配当を出されており、基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 14円/株 | 1.42% |
2011年3月 | 14円/株 | 1.64% |
2012年3月 | 16円/株 | 1.95% |
2013年3月 | 18円/株 | 1.64% |
2014年3月 | 22円/株 | 1.71% |
2014年12月 | 25円/株 | 1.46% |
2015年12月 | 27円/株 | 2.05% |
2016年12月 | 28円/株 | 1.62% |
2017年12月 | 35円/株 | 1.79% |
2018年12月 | 35円/株 | 2.84% |
2019年12月 | 36円/株 | 3.14% |
2020年12月 | 27円/株 | 2.65% |
2021年12月 | 29円/株 | 3.01% |
なお、株主優待は2月末の権利確定で大丸・松坂屋で使える優待買物割引カード(10%割引)がもらえます。限度額は100株以上で50万円まで、500株以上で100万円まで、1000株以上で200万円まで、2000株以上で300万円まで、3000株以上で400万円まで、4000株以上で500万円まで。さらに保有期間が3年以上だと限度額が1.5倍になります。また、新たに100株以上を保有した新規株主は、8月末の権利確定で上記限度額の1/2まで使える10%割引カードがもらえます。さらにさらに100株以上保有していると、パルコで5%が割引される優待買物クレジットカードを申し込むこともできます。


大丸や松坂屋、パルコでしょっちゅう買い物をされる方にはメリットが大きい優待ですね。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは25.61倍であり、基準未達です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.84倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も21.51で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高3314億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | △ | 2021年赤字 |
④収益成長性 | × | -101.0% |
⑤配当 | ◎ | 利回り3.01%+優待あり |
⑥株価収益率 | × | 25.61倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.84倍 |
財務状況と収益安定性/成長性、株価収益率の4項目で基準未達となり、「 J.フロント リテイリング(株)は割安株には該当しない」という結果となりました。
流動資産に対する負債の割合が高いことと、コロナ禍による業績悪化のダメージが非常に大きいですね。
「コロナ前の収益には戻らない。元に戻らないのなら新たな収益源を作りにいく。待っているだけでは収益は上がらない」と新たな中期経営計画を策定されており、今後、グループ保有の不動産資産を有効活用する「デベロッパー戦略」、店舗を起点としたデジタル活用で新たな体験価値を創出する「リアル×デジタル戦略」、上質なライフスタイルを楽しむ生活者への提案強化を図る「プライムライフ戦略」に取り組むとのことですので、その成果に期待したいものです。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。






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