
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである楽天グループ(株)【4755】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った楽天グループ(株)【4755】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・楽天グループ(株)【4755】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


楽天グループ(株)【4755】 の基本情報
・設立年月日 1997年2月7日
・上場年月日 2000年4月19日
・業種 サービス業
・特色 ネット通販で国内双璧。金融、旅行など総合路線。2019年携帯電話事業参入、通信インフラ外販も。
・資本金 2,896億円
・従業員数 (単独)7,744人 (連結)28,261人
・株価 672円(2022.8.1)
・単元 100株
・決算 12月末日


楽天グループは1997年の創業時より、イノベーションの力を信じ、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」という想いのもと、「グローバル イノベーション カンパニー」であり続けることを目指し、様々なビジネスを展開されています。
「インターネットで人はモノを買わない」と言われた時代に、地方の小さな商店でも、コンピューターに強くなくても、誰でも簡単に店を開けるようにしたいというコンセプトで、インターネット・ショッピングモール『楽天市場』を開設。従業員6人、サーバー1台、13店舗でスタートされたそうです。
2000年の株式公開によって、企業としての認知度を大きく向上させるとともに、上場で得た資金によるM&A等を通じて、その後のいわゆる「楽天経済圏」を形成する新たな事業進出への大きなきっかけをつくっています。
2002年には、ネット上でのポイントプログラム『楽天ポイント』のサービスを開始。 創業5年目で 6,000店舗突破。2004年には日本のプロ野球界において50年ぶりとなる新規球団『東北楽天ゴールデンイーグルス』を誕生させました。
2011年には、創業14年目で『楽天市場』の出店店舗数が 3万8千店舗、年間流通総額が 1兆円を突破しています。2014年には、『Viber』の買収、『楽天モバイル』の開始、さらには2019年からの携帯キャリア事業の開始によって通信・コミュニケーションサービスを強化するとともに、2015年にはヴィッセル神戸をグループに加え、スポーツ・文化事業の強化など幅広く事業を拡大されています。
常識にとらわれず、アイデアを組み合わせ、イノベーションを生み出し続ける。企業の枠を越えて、人々の夢の実現を後押しすることで、世界に喜びと楽しさを届けることを目指されています。
ではここからは、楽天グループ(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
サービス業517社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 1兆103億円(7位) |
売上高 | 1兆6817億円(4位) |
営業利益 | -1947億2600万円(517位) |
経常利益 | -2126億3000万円(517位) |
純利益 | -1338億2800万円(517位) |
営業利益率 | -%(-位) |
純利益率 | -%(-位) |
総資産 | 17兆9857億円(2位) |
負債 | 16兆9314億円(2位) |
サービス業の中で売上高は4位、総資産は2位とさすがのスケール。ただ昨年はものすごい赤字を出されており、営業利益、経常利益、純利益いずれもサービス業で最下位。サービス業大手の一社であり、事業規模は文句なしです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2022年12月期の決算短信では、流動資産は1,504,800百万円、流動負債は1047,900百万円、固定負債は1,307,100百万円なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.44倍で基準未達、
②は、固定負債1,307,100百万円 > 純流動資産456,900百万円 で基準未達となり、
よって、流動資産に対して流動/固定負債いずれも多すぎますね。基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、ここ3年が大きな赤字になってますね。これはいけません。特に2021年12月期は過去最大の赤字。楽天モバイルの基地局整備などで携帯通信事業の赤字が膨らんだとのこと。
携帯事業だけの営業赤字は4211億円と前期比約9割増えており、急ピッチで進める基地局の整備で同事業の償却費が増えた上、自社設備が整わない地域でKDDIから回線を借りる「ローミング」の費用がかさんだそうです。いうわけで基準未達です。
年度 | 純利益 |
2012年12月 | 211億3600万円 |
2013年12月 | 441億7000万円 |
2014年12月 | 714億1200万円 |
2015年12月 | 458億8500万円 |
2016年12月 | 384億3500万円 |
2017年12月 | 1104億8800万円 |
2018年12月 | 1418億8900万円 |
2019年12月 | -330億6800万円 |
2020年12月 | -1141億9900万円 |
2021年12月 | -1358億2600万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
IR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が34.5円、直近の3年平均が-65.8円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = -290.4% となり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2012年12月 | 16円 | |
2013年12月 | 33.56円 | 3年平均:34.5円 |
2014年12月 | 54.07円 | |
2015年12月 | 33.38円 | |
2016年12月 | 26.96円 | |
2017年12月 | 79.96円 | |
2018年12月 | 105.14円 | |
2019年12月 | -24.42円 | |
2020年12月 | -84円 | 3年平均:-65.8円 |
2021年12月 | -88.92円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、きっちり配当が出てますね。基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2009年12月 | 1円/株 | 0.14% |
2010年12月 | 2円/株 | 0.29% |
2011年12月 | 2.5円/株 | 0.3% |
2012年12月 | 3円/株 | 0.45% |
2013年12月 | 4円/株 | 0.26% |
2014年12月 | 4.5円/株 | 0.27% |
2015年12月 | 4.5円/株 | 0.32% |
2016年12月 | 4.5円/株 | 0.39% |
2017年12月 | 4.5円/株 | 0.44% |
2018年12月 | 4.5円/株 | 0.61% |
2019年12月 | 4.5円/株 | 0.48% |
2020年12月 | 4.5円/株 | 0.45% |
2021年12月 | 4.5円/株 | 0.39% |
なお、株主優待としては、12月末の権利確定で100株以上で500円の楽天キャッシュ(5年以上保有なら1,000円)、1000株以上で1,000円(5年以上保有なら1,500円)、5000株以上で1,500円(5年以上保有なら2,000円)、10000株以上で2,000円(5年以上保有なら2,500円)がもらえます。また、100株以上保有の全員に楽天トラベルの国内宿泊クーポンが1,500円分がもらえます。
例えば100株の5年未満保有なら、3%程度の優待利回りがあることになりますね。配当自体は低めですけど、優待分も合わせるとまずまずの利回りではないでしょうか。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
昨年度が赤字である以上、PERは算出不能、ということで基準未達です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは1.03倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR は算出不能、なので基準未達です。
まずはここ3年続いている赤字を何とかしないと、ということですね。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高1兆6817億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 2019年,2020年,2021年赤字 |
④収益成長性 | × | -290.4% |
⑤配当 | 〇 | 利回り0.39%+優待あり |
⑥株価収益率 | × | 算出不能 |
⑦株価純資産倍率 | × | 1.03倍 PER×PBRが算出不能 |
財務状況、収益安定性/成長性、株価収益率、株価純資産倍率の5項目で基準未達となり、「楽天グループ(株)は割安株に該当しない」という結果となりました。ここは負債の多さと大幅赤字が続いていることに尽きます。これだけ不安定要素が多いと、割安株としてしばらく手は出せないですね。
楽天グループの課題はなんといっても楽天モバイル。直近の赤字幅を見る限り、まだまだ黒字化に向けては前途多難かもしれません。このマイナスの余波によるものかどうかは不明ですが、「楽天経済圏」の制度改悪も徐々に進んでおり、現状は通信事業のマイナスをグループ全体の利益でなんとか賄っている状況です。
通信業界では通信料の値下げが着実に進んでおり、引き続き厳しい状況が続きそうですし、通信と非通信事業の融合というビジネスモデルの有用性を証明するためにも、今後のV字回復に向けた仕掛けに注目です。
というわけで現時点では、
「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、
・コムシスホールディングス【1721】
・積水ハウス【1928】
・宝ホールディングス【2531】
・SUMCO【3436】
・東ソー【4042】
の5社です。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




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