
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである富士フィルムホールディングス(株)【4901】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った富士フィルムホールディングス(株)【4901】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・富士フィルムホールディングス(株)【4901】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


富士フィルムホールディングス(株)【4901】 の基本情報
・設立年月日 1934年1月20日
・上場年月日 1949年5月
・業種 化学
・特色 写真、医療機器、医薬、液晶フィルム、半導体材料、事務機器展開。医療注力。M&Aにも積極的。
・資本金 403億円
・従業員数 (単独)815人 (連結)75,474人
・株価 7,459円(2022.8.2)
・単元 100株
・決算 3月末日


富士フイルムは、写真フィルムなどで培ってきた技術を生かし、「ヘルスケア」「マテリアルズ」「イメージング」の3つの領域で幅広い事業を展開しています。価値ある製品・サービスを提供し、社会の発展と人々の生活の質の向上に貢献することを目指しています。
ヘルスケア領域では、トータルヘルスケアカンパニーとして「予防」「診断」「治療」の3領域で幅広い事業を展開。アンメットメディカルニーズへの対応や疾病の早期発見、画期的なワクチンや医薬品の開発・製造支援などを通じて、世界の人々の健康に貢献しています。
マテリアルズ領域では、高機能材料やグラフィックシステム・インクジェット、記録メディアなど、産業の効率化や社会のICT化推進などを通じて、資源循環の促進や気候変動への対応といった環境課題に取り組んでいます。
イメージング領域では、フォトイメージングや光学・電子映像など、さまざまな思い出や出来事を写真や画像・映像というカタチにすることで、心の豊かさや人々のつながりを強めることに貢献しているほか、安全・安心な社会づくりも推進しています。
企業理念は、「わたしたちは、先進・独自の技術をもって、最高品質の商品やサービスを提供する事により、社会の文化・科学・技術・産業の発展、健康増進、環境保持に貢献し、人々の生活の質のさらなる向上に寄与します」。
「オープン、フェア、クリアな企業風土と先進・独自の技術の下、勇気ある挑戦により、新たな商品を開発し、新たな価値を創造するリーディングカンパニーであり続ける」ことをグループ全体で目指されています。
ではここからは、富士フィルムホールディングス(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
化学215社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 3兆299億円(2位) |
売上高 | 2兆5257億円(3位) |
営業利益 | 2297億200万円(3位) |
経常利益 | 2604億4600万円(3位) |
純利益 | 2111億4600万円(2位) |
営業利益率 | 9.1%(81位) |
純利益率 | 8.4%(55位) |
総資産 | 3兆9552億円(4位) |
負債 | 1兆4303億円(4位) |
化学の中で売上高は3位、総資産は4位。利益率もまずまず高く、営業利益率は9.1%で業界81位、純利益率は8.4%と業界55位。化学メーカーの中でトップの一社、もちろん事業規模は文句なしです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2022年3月期の決算短信では、流動資産は1,724,729百万円、流動負債は979,575百万円、固定負債は450,765百万円なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.76倍で基準未達、
②は、固定負債450,765百万円 < 純流動資産745,154百万円 で基準達成となり、
よって、流動資産に対して流動負債の割合がわずかに高く、基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、毎年きっちり、概ね右肩上がりで利益を上げられており、赤字はありません。というわけで基準達成です。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | 508億4700万円 |
2014年3月 | 715億5800万円 |
2015年3月 | 1109億4000万円 |
2016年3月 | 1164億200万円 |
2017年3月 | 1315億600万円 |
2018年3月 | 1406億9400万円 |
2019年3月 | 1381億600万円 |
2020年3月 | 1249億8700万円 |
2021年3月 | 1812億500万円 |
2022年3月 | 2111億8000万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
IR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が159.1円、直近の3年平均が429.0円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = 169.5% となり、基準達成です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | 98.8円 | |
2014年3月 | 148.49円 | 3年平均:159.1円 |
2015年3月 | 230.14円 | |
2016年3月 | 250.03円 | |
2017年3月 | 296.27円 | |
2018年3月 | 322.62円 | |
2019年3月 | 326.81円 | |
2020年3月 | 306.18円 | |
2021年3月 | 453.28円 | 3年平均:429.0円 |
2022年3月 | 527.44円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、きっちり配当が出てますね。基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 25円/株 | 0.78% |
2011年3月 | 30円/株 | 1.16% |
2012年3月 | 35円/株 | 1.8% |
2013年3月 | 40円/株 | 2.18% |
2014年3月 | 50円/株 | 1.8% |
2015年3月 | 60円/株 | 1.4% |
2016年3月 | 65円/株 | 1.46% |
2017年3月 | 70円/株 | 1.61% |
2018年3月 | 75円/株 | 1.77% |
2019年3月 | 80円/株 | 1.59% |
2020年3月 | 95円/株 | 1.75% |
2021年3月 | 100円/株 | 1.52% |
2022年3月 | 120円/株 | 1.47% |
なお、株主優待は3月末の権利確定で100株以上でグループヘルスケア商品優待割引販売、100株以上の1年以上保有でグループヘルスケアトライアルキットおよびヘルスケア商品(2,000~3000円相当)、300株以上を3年以上保有なら4,000~5,000円相当の商品、500株以上を3年以上保有なら9,000~10,000円相当の商品がもらえます。
100株の1年保有なら優待分で0.4%程度の配当があることになりますね。


また、9月末の権利確定で100株以上保有でグループヘルスケア商品割引販売、100株以上の1年以上保有でグループフォトブック等プリントサービス利用クーポン券1,000円分、500株以上の3年以上保有で4,000円分がもらえます。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは15.57倍であり、基準未達です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは1.19倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も20.09で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高8553億円 |
②財務状況 | △ | 流動負債多い |
③収益安定性 | 〇 | 赤字なし |
④収益成長性 | ◎ | +169.5% |
⑤配当 | 〇 | 利回り1.47%+優待あり |
⑥株価収益率 | △ | 15.57倍 |
⑦株価純資産倍率 | 〇 | 1.29倍 |
財務状況と株価収益率の2項目で基準未達となり、「富士フィルムホールディングス(株)は割安株に該当しない」という結果となりました。ただ、いずれもわずかに基準未達であり、かなり惜しいところでした。
売上高の6割、営業利益の3分の2を写真フィルム関連事業が占めていた2000年当時に、ヘルスケア部門への進出に成功し、売上高や営業利益規模を大きく変えることなく、事業の多角化させ、コロナ影響を受けづらい経営基盤を獲得されたのはお見事です。中核事業を維持しつつ、同時にイノベーションを起こす、成熟企業の「両利きの経営」のお手本とされる富士フイルム、今後の成長に期待ですね。
というわけで現時点では、
「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、
・コムシスホールディングス【1721】
・積水ハウス【1928】
・宝ホールディングス【2531】
・SUMCO【3436】
・東ソー【4042】
の5社です。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




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