
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである出光興産(株)【5019】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った出光興産(株)【5019】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・出光興産(株)【5019】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


出光興産(株)【5019】 の基本情報
・設立年月日 1940年3月30日
・上場年月日 2006年10月24日
・業種 石油・石炭製品
・特色 石油元売り2位。石油化学や原油・石炭開発も。昭和シェル石油と2019年4月1日に経営統合。
・資本金 1,683億円
・従業員数 (単独)5,123人 (連結)14,209人
・株価 3,430円(2022.7.30)
・単元 100株
・決算 3月末日


出光グループは、燃料油、潤滑油、アスファルト、石油・ガス開発、再生可能エネルギー、石炭、石油化学、電子材料などの事業をグローバルに展開しており、原油調達から製造、販売まで、バリューチェーン全体をカバーする一貫した事業体制を築いています。
全国に支店を有する他、国内に4ヵ所の製油所と3ヵ所の工場、2ヵ所の研究所も保有し、ガソリンスタンドを5,000店舗以上展開しています。国内外に子会社約80社と関連会社30社以上の出光興産グループを形成しており、名実共に日本を代表する石油企業として君臨しています。
基盤事業として石油輸送、製油所、地熱、風力やバイオ燃料といった再生可能エネルギー、産業用の石炭や各種燃料などを供給しています。資源事業としてはベトナム・ノルウェー・イギリスの油田開発の他、日本で唯一海外での石炭鉱山オペレータを行なう企業としてオーストラリアでの開発なども手掛けています。
また、日本の石油元売り会社で唯一、ウラン資源の開発も行なっているのも出光興産の特徴のひとつです。高機能材事業として、自動車用潤滑油、アグリバイオ、電子材料、半導体の加工原料として使われている出光オリジナル素材や機能性樹脂などを提供する他、長年の研究開発力を通じて新しいリチウムイオン電池の開発など新たな事業も視野に入れています。
経営の原点は、創業者である出光佐三の「人間尊重」、企業理念は「真に働く」とし、
「国・地域社会、そこに暮らす人々を想い、考えぬき、働きぬいているか。日々自らを顧みて更なる成長を目指す。かかる人が集い、一丸となって不可能を可能にする。私たちは、高き理想と志を掲げ、挑み続ける。」と宣言されています。言葉の重み、歴史の重みを感じますね。
ではここからは、出光興産(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
石油・石炭製品11社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 2兆2162億円(2位) |
売上高 | 6兆6867億円(2位) |
営業利益 | 4344億5300万円(2位) |
経常利益 | 4592億7500万円(2位) |
純利益 | 2794億9800万円(2位) |
営業利益率 | 6.5%(7位) |
純利益率 | 4.2%(8位) |
総資産 | 4兆6011億円(2位) |
負債 | 3兆1646億円(2位) |
石油・石炭製品の中で売上高は2位、総資産も2位。利益率は低めで純利益率は4.2%の8位。石油・石炭製品メーカーの中でエネオスに次ぐ存在の一社であり、事業規模は文句なしです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2022年3月期の決算短信によると、
流動資産:2兆3680億8800万円
流動負債:2兆612億7300万円
固定負債:1兆1033億9700万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.15倍で基準未達、
②も、固定負債1兆1033億9700万円 > 純流動資産3068億1500万円 で基準未達となり、
よって、流動資産に対して流動/固定負債いずれの割合も高く、基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2015年と2016年、2020年が赤字ですね。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が落ち込む中で原油価格が急落した影響で燃料油セグメントの在庫影響の損失拡大などが原因なんだそう。というわけで基準未達です。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | 501億6700万円 |
2014年3月 | 362億9400万円 |
2015年3月 | -1379億5800万円 |
2016年3月 | -359億9300万円 |
2017年3月 | 881億6400万円 |
2018年3月 | 1623億700万円 |
2019年3月 | 814億5000万円 |
2020年3月 | -229億3500万円 |
2021年3月 | 349億2000万円 |
2022年3月 | 2794億9800万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
IR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が-76.3円、直近の3年平均が327.1円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 は計算上∞となり、基準達成です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | 313.54円 | |
2014年3月 | 226.9円 | 3年平均:-76.3円 |
2015年3月 | -862.49円 | |
2016年3月 | -225.02円 | |
2017年3月 | 551.19円 | |
2018年3月 | 845.17円 | |
2019年3月 | 401.63円 | |
2020年3月 | -76.31円 | |
2021年3月 | 117.47円 | 3年平均:327.1円 |
2022年3月 | 940.15円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、きっちり配当が出てますね。基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 37.5円/株 | 2.12% |
2011年3月 | 50円/株 | 2.05% |
2012年3月 | 50円/株 | 2.42% |
2013年3月 | 50円/株 | 2.46% |
2014年3月 | 50円/株 | 2.36% |
2015年3月 | 50円/株 | 2.39% |
2016年3月 | 50円/株 | 2.49% |
2017年3月 | 50円/株 | 1.29% |
2018年3月 | 80円/株 | 1.98% |
2019年3月 | 100円/株 | 2.7% |
2020年3月 | 160円/株 | 6.46% |
2021年3月 | 120円/株 | 4.2% |
2022年3月 | 170円/株 | 5.04% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは5.86倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.69倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も4.04で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高6兆6867億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 2015年,2016年,2020年赤字 |
④収益成長性 | ◎ | +∞% |
⑤配当 | ◎ | 利回り5.04% |
⑥株価収益率 | ◎ | 5.86倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.69倍 |
財務状況と収益安定性の2項目で基準未達となり、「出光興産(株)は割安株に該当しない」という結果となりました。流動/固定いずれの負債も多く、赤字が10年中3年もあるのは厳しいですね。
世界的な脱炭素化の加速が進む中、化石燃料を主力事業とする石油元売り企業として向かい風の中でどのように成長戦略を描いていくのか、次世代エネルギーへ徐々に移行し、それを伸ばしていくことになのか、全く異なる事業に軸足を移していくのか、今後、出光興産がどのように対応していくのかに注目です。
というわけで現時点では、
「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、
・コムシスホールディングス【1721】
・積水ハウス【1928】
・宝ホールディングス【2531】
・SUMCO【3436】
・東ソー【4042】
の5社です。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




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