
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである(株)資生堂【4911】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った(株)資生堂【4911】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・(株)資生堂【4911】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


(株)資生堂【4911】 の基本情報
・設立年月日 1927年6月24日
・上場年月日 1949年5月
・業種 化学
・特色 化粧品国内大手。中国を第2の本社と位置づけ、積極展開。高価格帯スキンケアの強化に注力。
・資本金 645億円
・従業員数 (単独)4,260人 (連結)35,318人
・株価 5,571円(2022.8.4)
・単元 100株
・決算 12月末日


資生堂はスキンケア、メイクアップ、フレグランスなどの「化粧品」を中心とした事業展開を行いながらも、そのほか「レストラン事業」「教育・保育事業」など幅広く展開しています。 化粧品だけにとどまらず、世界中のお客さまの生活に新しい価値を創造し、資生堂にしかできない「ビューティーイノベーション」で社会に貢献したいと考えています。
化粧品事業では、デパートなどでカウンセリングを通じて販売しているメイクアップ・スキンケアブランドなど、あらゆる顧客の美しさをかなえるため、さまざまなブランドを届けています。
また、美とは、決して肌表面の話だけではなく、身体全体の健やかさや、生き方、すべてを踏まえたホリスティックなものと考え、資生堂グループの企業資産や文化を活用し、幅広く事業を展開しています。
具体的には1902年創業した 「資生堂パーラー」などのレストラン事業、「ヘア」「エステ」「ブライダル」のトータルビューティーでお客さまの美をかなえる美容室事業、事業所内保育所の運営サポートを行う保育事業、美容人材を育成する教育活動や 学校法人との連携活動などがあります 。
企業理念として、THE SHISEIDO PHILOSPHYと定義し、「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」をミッションとして、「美の力でよりよい世界を。」
それを企業使命とされています。
ではここからは、(株)資生堂に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
化学215社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 2兆7414億円(4位) |
売上高 | 1兆4187億円(8位) |
営業利益 | 1435億1000万円(24位) |
経常利益 | 1500億200万円(22位) |
純利益 | 1096億3600万円(15位) |
営業利益率 | 4.0%(165位) |
純利益率 | 4.1%(140位) |
総資産 | 1兆3025億円(11位) |
負債 | 7269億4500万円(10位) |
化学の中で売上高は8位、総資産は11位。利益率は低めで純利益率は4.1%の140位。化学メーカーの中で大手の一社であり、事業規模は文句なしです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2022年12月期の決算短信によると、
流動資産:5056億2600万円
流動負債:4033億500万円
固定負債:3236億3900万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.25倍で基準未達、
②も、固定負債3236億3900万円 > 純流動資産1023億2100万円 で基準未達となり、
よって、流動資産に対して流動/固定負債いずれの割合も高く、基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2013年と2020年が赤字ですね。特に2020年は新型コロナウイルスの影響で小売店への来店客数が減少。入国制限によるインバウンド需要の落ち込みが響いたそうです。B to C事業のリスクをもろに受けてしまった感じですね。というわけで基準未達です。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | -146億8500万円 |
2014年3月 | 261億4900万円 |
2015年3月 | 336億6800万円 |
2015年12月 | 232億1000万円 |
2016年12月 | 321億100万円 |
2017年12月 | 227億4900万円 |
2018年12月 | 614億300万円 |
2019年12月 | 735億6200万円 |
2020年12月 | -116億6000万円 |
2021年12月 | 469億900万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
IR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が37.8円、直近の3年平均が90.8円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = 140.3% となり、基準達成です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | -36.71円 | |
2014年3月 | 65.65円 | 3年平均:37.8円 |
2015年3月 | 84.44円 | |
2015年12月 | 58.17円 | |
2016年12月 | 80.41円 | |
2017年12月 | 56.95円 | |
2018年12月 | 153.73円 | |
2019年12月 | 184.18円 | |
2020年12月 | -29.19円 | 3年平均:90.8円 |
2021年12月 | 117.42円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、きっちり配当が出てますね。基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 50円/株 | 2.46% |
2011年3月 | 50円/株 | 3.47% |
2012年3月 | 50円/株 | 3.5% |
2013年3月 | 50円/株 | 3.77% |
2014年3月 | 20円/株 | 1.1% |
2015年3月 | 20円/株 | 0.94% |
2015年12月 | 20円/株 | 0.79% |
2016年12月 | 20円/株 | 0.68% |
2017年12月 | 27.5円/株 | 0.5% |
2018年12月 | 45円/株 | 0.65% |
2019年12月 | 60円/株 | 0.77% |
2020年12月 | 40円/株 | 0.56% |
2021年12月 | 50円/株 | 0.78% |
なお、株主優待は12月末の権利確定で100株以上を1年以上保有で1,500円相当のグループ商品または寄付、1000株以上なら10,000円相当の商品がもらえます。100株の1年保有の場合、0.3%程度の配当があることになりますね。


⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは50.59倍であり、基準未達です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは4.03倍であり、①のPBRは基準未達です。
②のPER × PBR も203.88で基準未達です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高1兆4187億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 2013年,2020年赤字 |
④収益成長性 | ◎ | +140.3% |
⑤配当 | 〇 | 利回り0.78%+優待あり |
⑥株価収益率 | × | 50.59倍 |
⑦株価純資産倍率 | × | 4.03倍 |
財務状況と収益安定性、株価収益率、株価純資産倍率の4項目で基準未達となり、「(株)資生堂は割安株に該当しない」という結果となりました。流動/固定いずれの負債も多く、赤字が10年中2年あるのは厳しいですね。この財務内容でこの株価の高さは、やはり企業イメージの良さでしょうか。
資生堂では、2015~17年には「事業基盤の再構成(ブランド強化、マーケティング・R&D 投資の拡大など)、2018~20年には「成長加速の新戦略(新ブランド・M&A、ビジネスモデルの見直しなど)」を成長戦略に掲げ実施してきています。また、コロナ禍で大きな影響を受けたように、「インバウンド需要への依存」は「国内の消費者の価値観・購買行動の変化への対応不足」が課題が大きな課題といえます。今後、資生堂がこれら課題にどのように対応していくのかに注目です。
というわけで現時点では、
「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、
・コムシスホールディングス【1721】
・積水ハウス【1928】
・宝ホールディングス【2531】
・SUMCO【3436】
・東ソー【4042】
の5社です。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




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