こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つであるAGC(株)【5201】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。
・バリュー投資の7つの基準に沿ったAGCの評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・AGCは割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。
日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株はどれか?
を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。
AGC(株)【5201】 の基本情報
・設立年月日 1950年6月1日
・上場年月日 1950年6月
・業種 ガラス土石製品
・特色 三菱系。ディスプレー、建築、自動車でガラス世界級。アジアで化学品拡大。5G関連素材育成。
・資本金 908億円
・従業員数 (単独)7,610人 (連結)57,740人
・株価 5,079円(2023.10.11)
・単元 100株
・決算 12月末日
建築材料、自動車向けなどのガラスを中心に、電子部材やその他の化学関連素材を製造・販売しており、特にガラスについては世界最大手。建築用ガラス、フッ素化学製品などを取り扱っており、100年以上にわたる技術革新の歴史の中で培った世界トップレベルの技術を強みに、「ガラス」「電子」「化学品」「セラミックス」の事業領域で新たな価値創造に挑戦しています。
長期安定的な収益基盤を構築しているコア事業は「建築用ガラス」「自動車用ガラス」「ディスプレイ」「クロールアルカリ・ウレタン」「フッ素・スペシャリティ」「セラミックス」の6分野、「モビリティ」「エレクトロニクス」「ライフサイエンス」の3分野を将来の柱となる高収益事業に位置付けています。
保有する事業が幅広く、技術力に自信がある印象ですね。
Look Beyond
創業者が唱えた精神は「易きになじまず難きにつく」の思想をベースに、将来を見据え、自らの領域を超えた視点を持ち、現状に満足せず飽くなき革新を追求し、グループ全体が持つ大きな潜在力を発揮し、世界に価値を提供し続けることを目指されています。
そして、次世代を担う成長産業に独自の素材を供給できることを自社の強みと認識し、2030年のありたい姿を「独自の素材・ソリューションの提供を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するとともに、継続的に成長・進化するエクセレントカンパニーでありたい」と宣言されています。
ではここからは、AGC(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
ガラス・土石製品57社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 1兆964億円(1位) |
売上高 | 2兆358億円(1位) |
営業利益 | 1839億4200万円(1位) |
純利益 | -31億5200万円(54位) |
営業利益率 | 9.0%(20位) |
純利益率 | -%(-位) |
総資産 | 2兆9578億円(1位) |
負債 | 1兆2823億円(1位) |
ガラス・土石製品の中で売上高、総資産ともダントツの1位。純利益りは昨季マイナスながら営業利益率は9.0%の20位とまずまずの高さ。世界最大手のガラスメーカーです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「流動資産が流動負債の2倍以上であること」。 また、②「固定負債が純流動資産を超えていないこと」。
2022年12月期の決算短信によると、
流動資産:1兆630億円
流動負債:6699億9900万円
固定負債:5584億3900万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.59倍で基準未達、
②は、固定負債5584億円 > 純流動資産3930億円 で基準未達となり、
流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も高いですね。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2022年が赤字ですね。テレビなどが伸び悩み、液晶ガラス基板といったディスプレー事業で737億円の減損損失を計上したことと、ロシアの製造拠点の撤退を念頭に置いた損失なども織り込んだ影響なんだそう。残念ながら基準未達です。
年度 | 純利益 |
2013年12月 | 161億3900万円 |
2014年12月 | 159億1300万円 |
2015年12月 | 429億600万円 |
2016年12月 | 474億3800万円 |
2017年12月 | 692億2500万円 |
2018年12月 | 895億9300万円 |
2019年12月 | 444億3400万円 |
2020年12月 | 327億1500万円 |
2021年12月 | 1238億4000万円 |
2022年12月 | -31億5200万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
過去10年のIR情報を確認すると、(直近の3年平均 – 最初の3年平均 ) / 最初の3年平均 × 100 = 113.6%となり、基準達成です。
年度 | EPS | |
2013年12月 | 69.82円 | |
2014年12月 | 68.84円 | 3年平均:108.1円 |
2015年12月 | 185.59円 | |
2016年12月 | 205.14円 | |
2017年12月 | 302.11円 | |
2018年12月 | 399.51円 | |
2019年12月 | 200.85円 | |
2020年12月 | 147.83円 | |
2021年12月 | 559.1円 | 3年平均:230.9円 |
2022年12月 | -14.22円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、きっちり配当が出てますね。基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2009年12月 | 80円/株 | 1.82% |
2010年12月 | 130円/株 | 2.74% |
2011年12月 | 130円/株 | 4.02% |
2012年12月 | 130円/株 | 4.15% |
2013年12月 | 90円/株 | 2.75% |
2014年12月 | 90円/株 | 3.06% |
2015年12月 | 90円/株 | 2.59% |
2016年12月 | 90円/株 | 2.26% |
2017年12月 | 105円/株 | 2.15% |
2018年12月 | 115円/株 | 3.35% |
2019年12月 | 120円/株 | 3.05% |
2020年12月 | 120円/株 | 3.33% |
2021年12月 | 210円/株 | 3.83% |
2022年12月 | 210円/株 | 4.78% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PERが15倍以下であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは18.86倍であり、基準未達です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBRが1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.74倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も13.96で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高2兆円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | △ | 2022年赤字 |
④収益成長性 | ◎ | +113.6% |
⑤配当 | ◎ | 利回り4.78% |
⑥株価収益率 | △ | 18.86倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.74倍 |
財務状況と収益安定性、株価収益率の3項目で基準未達となり、
AGC(株)は割安株には該当しません!
という結果となりました。
流動資産に対して流動/固定負債の割合が若干高く、赤字あり、株価も高めとなれば仕方なしですね。
事業ポートフォリオ変革による営業キャッシュ・フローの拡大に加え、政策保有株式などの資産売却により得たキャッシュを、戦略事業・成長事業への投資に重点配分する。株主還元についても、基本方針として連結配当性向40%を目安に安定的な配当を継続しつつ、自己株式取得を機動的に実施する。
AGCが経営方針ACG plusのもと、「コア事業」の深化と「戦略事業」の探索を実現する両利きの経営を今後さらに追求し、戦略事業領域においては成長を加速させるとともに、エネルギー関連など新たな事業領域を探索していくとのこと。今後、財務状況が改善すれば割安株となる可能性は十分あると思いますし、世界で戦える日本企業の一社としてこれからも期待したいですね。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
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