こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである日本板硝子(株)【5202】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。
*日本板硝子(株)は2023年10月に日経平均株価の構成銘柄から除外されました。
・バリュー投資の7つの基準に沿った日本板硝子の評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・日本板硝子は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。
日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株はどれか?
を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。
日本板硝子(株)【5202】 の基本情報
・設立年月日 1918年11月
・上場年月日 1950年6月
・業種 ガラス土石製品
・特色 住友系のガラス専業。建築・自動車用が9割。英ピルキントン買収で世界展開。欧州比率大。
・資本金 1,167億円
・従業員数 (単独)1,707人 (連結)24,880人
・株価 717円(2023.10.14)
・単元 100株
・決算 3月末日
建築用・自動車用ガラスおよびガラス加工製品において世界最大級のメーカーの一つで、主要な事業分野は「建築用ガラス事業」「自動車用ガラス事業」「クリエイティブ・テクノロジー事業部門」の3つ。
「建築用ガラス事業」では、エネルギー効率の向上やCO2排出量の削減に非常に重要な役割を果たしており、防火、防音、安全・防犯、プライバシー、装飾、セルフクリーニングなどの付加価値製品を提供しています。また、「自動車用ガラス事業」では、世界最大の自動車用ガラスメーカーの一社として、新車用(OE)ガラス、補修用(AGR)ガラス、産業用輸送機材(ST)向けガラスの分野で製品を供給しています。
薄膜太陽光発電に使用されている基板ガラスにおいて大きなシェアを占める世界屈指のガラスメーカーです。
快適な生活空間の創造で、より良い世界を築く
会社を変えていく従業員の決意と、長年にわたって築かれた価値観(誠実で倫理的な行動、安全と技術の追求、人の尊重)を基盤とし、「先進の発想で変化を起こし、すべての分野で最も信頼されるパートナーとなる」ことを目指されています。
ではここからは、日本板硝子(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
ガラス・土石製品57社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 653億4400万円(19位) |
売上高 | 7635億2100万円(3位) |
営業利益 | 348億1200万円(6位) |
純利益 | -337億6100万円(57位) |
営業利益率 | 4.6%(35位) |
純利益率 | -%(-位) |
総資産 | 1兆円(4位) |
負債 | 8443億4000万円(2位) |
ガラス・土石製品の中で売上高は3位、総資産は4位。純利益はマイナスながら営業利益率は4.6%35位と中位。ガラスメーカーの中では大手の一社です。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「流動資産が流動負債の2倍以上であること」。 また、②「固定負債が純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:3363億1900万円
流動負債:3843億7700万円
固定負債:4421億4200万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 0.87倍で基準未達、
②は、固定負債4421億円 > 純流動資産-480億円 で基準未達となり、
流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も高いですね。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2014年,2016年,2020年,2021年,2023年が赤字。直近の2023年は欧州の金利上昇を受け、06年に買収した英ガラス大手ピルキントンにかかわるのれん・無形資産の減損損失488億円を計上したとのこと。基準未達です。
年度 | 純利益 |
2014年3月 | -166億500万円 |
2015年3月 | 16億6800万円 |
2016年3月 | -498億3800万円 |
2017年3月 | 56億500万円 |
2018年3月 | 61億6400万円 |
2019年3月 | 132億8700万円 |
2020年3月 | -189億2500万円 |
2021年3月 | -169億3000万円 |
2022年3月 | 41億3400万円 |
2023年3月 | -337億6100万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
過去10年のIR情報を確認すると、(直近の3年平均 – 最初の3年平均 ) / 最初の3年平均 × 100 = 28.5%となり、基準未達です。そもそも最初の3年と直近の3年どちらもマイナスですからね。
年度 | EPS | |
2014年3月 | -183.96円 | |
2015年3月 | 18.47円 | 3年平均:-239.1円 |
2016年3月 | -551.76円 | |
2017年3月 | 62.04円 | |
2018年3月 | 68.18円 | |
2019年3月 | 146.8円 | |
2020年3月 | -208.91円 | |
2021年3月 | -186.8円 | |
2022年3月 | 45.57円 | 3年平均:-170.9円 |
2023年3月 | -371.6円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、ここ14年で9年の無配。あれだけの赤字ですからなかなか配当は出しにくいでしょうね。これはいけません。基準未達です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 60円/株 | 2.17% |
2011年3月 | 60円/株 | 2.5% |
2012年3月 | 45円/株 | 3.54% |
2013年3月 | 0円/株 | 0% |
2014年3月 | 0円/株 | 0% |
2015年3月 | 0円/株 | 0% |
2016年3月 | 0円/株 | 0% |
2017年3月 | 0円/株 | 0% |
2018年3月 | 20円/株 | 2.33% |
2019年3月 | 30円/株 | 3.37% |
2020年3月 | 0円/株 | 0% |
2021年3月 | 0円/株 | 0% |
2022年3月 | 0円/株 | 0% |
2023年3月 | 0円/株 | 0% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PERが15倍以下であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは5.93倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBRが1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.52倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も3.08で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高7635億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 10年中5年赤字 |
④収益成長性 | × | 28.5% |
⑤配当 | × | 14年中9年無配 |
⑥株価収益率 | ◎ | 5.93倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.52倍 |
財務状況と収益安定性/成長性、配当の4項目で基準未達となり、
日本板硝子(株)は割安株には該当しません!
という結果となりました。
流動資産に対して流動/固定負債の割合が高い上、とにかく赤字が多すぎます。ここまで不安定で配当も出てなければ厳しいですね。
コスト構造、事業構造、企業風土の「3つの改革」と財務基盤の回復、高収益事業へのポートフォリオ展開の「2つの重点施策」を断行し、持続的成長が果たせる強い事業体質を構築する。
AGCと並んで日本の二大ガラスメーカーと言われている日本板硝子、新中期経営計画「リバイバル計画24」では、改革と戦略の実行により、早期の収益力の回復と事業構造の転換の加速を実現し、安定的な純利益とフリー・キャッシュ・フローを創出する持続的成長が可能な事業体質への変革を進めていくとのこと。正直、現在かなり厳しい状況にあるのは事実だと思いますので、今後どこまで計画通りに成果を実現できるのか、注目していきたいものです。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
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