
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである日本製鉄(株)【5401】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った日本製鉄(株)【5401】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・日本製鉄(株)【5401】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


日本製鉄(株)【5401】 の基本情報
・設立年月日 1950年4月1日
・上場年月日 1950年10月
・業種 鉄鋼
・特色 粗鋼生産量で国内首位、世界3位。技術に定評、高級鋼板で圧倒的。2012年に住金と合併し発足。
・資本金 4,195億円
・従業員数 (単独)28,708人 (連結)106,528人
・株価 2,167円(2022.8.17)
・単元 100株
・決算 3月末日


日本製鉄は、2012年の新日本製鐵(当時業界1位)と住友金属工業(当時業界3位)の経営統合により新日鐵住金として発足した後、2017年の日新製鋼(当時業界4位)の子会社化等を経て、2019年4月1日に新社名となっています。国内の体制を盤石なものとしながら、よりグローバルな事業展開を推進しています。
鉄鋼メーカーのほか、鉄の製造プロセスにおける設備エンジニアリング・耐火・試験分析の企業、鉄鋼・建材・鋼線・溶接材への加工を行う企業、商社および物流を担う企業、新素材の開発やシステムソリューション、不動産事業など、さまざまな事業を行っています。
基本理念は、「常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献します」。将来にわたって日本の産業競争力を支える「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を目指し、世界の鉄鋼業をリードするとともに、環境と成長の好循環を図り、企業価値の向上に取り組まれています。
ではここからは、日本製鉄(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
鉄鋼44社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 1兆9471億円(1位) |
売上高 | 6兆8088億円(1位) |
営業利益 | 8409億100万円(1位) |
経常利益 | 8165億8300万円(1位) |
純利益 | 6373億2100万円(1位) |
営業利益率 | 12.4%(5位) |
純利益率 | 9.4%(7位) |
総資産 | 9兆244億円(1位) |
負債 | 4兆8579億円(1位) |
鉄鋼の中で売上高、総資産とも抜けた1位。利益率もなかなか高く、純利益率は9.4%の4位。鉄鋼の国内トップ、世界3位のメーカーですし、事業規模は文句なしです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:3兆6394億4400万円
流動負債:2兆929億9200万円
固定負債:2兆7649億7200万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.74倍で基準未達、
②は、固定負債2兆7649億7200万円 > 純流動資産1兆5464億5200万円 で基準未達となり、
よって、流動資産に対して流動/固定負債いずれの割合も高く、残念ながら基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2013年,2020年,2021年に赤字がありますね。直近の2021年は新型コロナウイルスの感染拡大で自動車など製造業の生産活動が停滞し、鋼材需要が減ったためとのこと。残念ですが基準未達です。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | -1245億6700万円 |
2014年3月 | 2427億5300万円 |
2015年3月 | 2142億9300万円 |
2016年3月 | 1454億1900万円 |
2017年3月 | 1309億4600万円 |
2018年3月 | 1808億3200万円 |
2019年3月 | 2511億6900万円 |
2020年3月 | -4315億1300万円 |
2021年3月 | -324億3200万円 |
2022年3月 | 6373億2100万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
IR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が123.5円、直近の3年平均が62.7円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = -49.2%となり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | -131.08円 | |
2014年3月 | 266.71円 | 3年平均:123.5円 |
2015年3月 | 234.83円 | |
2016年3月 | 158.72円 | |
2017年3月 | 147.97円 | |
2018年3月 | 204.88円 | |
2019年3月 | 281.77円 | |
2020年3月 | -468.74円 | |
2021年3月 | -35.22円 | 3年平均:62.7円 |
2022年3月 | 692.16円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、凹凸は大きいながら配当はしっかり出ています。基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 15円/株 | 0.41% |
2011年3月 | 30円/株 | 1.13% |
2012年3月 | 25円/株 | 1.1% |
2013年3月 | 10円/株 | 0.43% |
2014年3月 | 50円/株 | 1.77% |
2015年3月 | 55円/株 | 1.82% |
2016年3月 | 45円/株 | 2.08% |
2017年3月 | 45円/株 | 1.75% |
2018年3月 | 70円/株 | 3% |
2019年3月 | 80円/株 | 4.09% |
2020年3月 | 10円/株 | 1.08% |
2021年3月 | 10円/株 | 0.53% |
2022年3月 | 160円/株 | 7.37% |
なお、株主優待は3月末と9月末の権利確定で1,000株以上保有で「工場見学会」と「経営概況説明会」に抽選で招待してもらえます。また、5,000株以上保有で「鹿島アントラーズのリーグ戦」と「紀尾井ホール室内管弦楽団の定期演奏会」に抽選で招待してもらえます。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは3.33倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.53倍であり、①のPBRも基準達成です。
②のPER × PBR も1.76で基準達成です。これは今までの中では最低の数字、株価はかなり安いですね。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高6兆8088億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 2013年,2020年,2021年赤字 |
④収益成長性 | × | -49.2% |
⑤配当 | ◎ | 利回り7.37%+優待あり |
⑥株価収益率 | ◎ | 3.33倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.53倍 |
財務状況、収益安定性/成長性の3項目で基準未達となり、「日本製鉄(株)は割安株に該当しない」という結果となりました。流動資産に対して流動/固定負債の割合が高く、収益も不安定で成長性も低い、株価が安く配当利回りは高くても不安を感じますね。
新型コロナにより世界経済は一時的に落ち込んだものの、今年になって急回復しています。特に自動車や電気製品などの製造業が好調で、その材料として必要な鉄鋼の需要が盛り上がっています。鉄はわたしたちの暮らしになくてはならないものですから、鉄鋼生産が日本から消えることはないと思いますが、これから国内需要が大きく増えるとは考えにくく、今後は海外売上高を引き上げていくことが重要です。
また、鉄鋼業界のもう一つの課題は温室効果ガス削減。鉄鋼業界は日本全体の二酸化炭素排出量の13%を占めており、抜本的な削減策が求められています。鉄鋼業界の最大手として、環境対応と海外進出という二つの課題にどう取り組み、どんな成長軌道を描いていくかに注目したいと思います。
というわけで現時点では、
「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、
・コムシスホールディングス【1721】
・積水ハウス【1928】
・宝ホールディングス【2531】
・SUMCO【3436】
・東ソー【4042】
・日本ガイシ【5333】
の6社となりました。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




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