こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである(株)INPEX【1605】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。
・バリュー投資の7つの基準に沿ったINPEXの評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・INPEXは割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。
日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株はどれか?
を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。
(株)INPEX【1605】の基本情報
・設立年月日 2006年4月3日
・上場年月日 2006年4月3日
・業種 鉱業
・特色 原油・ガス開発生産国内最大手。政府が黄金株保有。豪州でLNG案件(イクシス)を操業。
・従業員数 (単独)1,367人 (連結)3,557人
・株価 2,110円(2024.8.14)
・単元 100株
・決算 12月末日
主な事業は、石油・天然ガス、その他の鉱物資源の調査、探鉱、開発、生産、販売及び同事業に付帯関連する事業、それらを行う企業に対する投融資で、国内外で幅広く事業展開されています。
今後、エネルギー開発・安定供給の責任を果たしつつ、2050年ネットゼロカーボン社会の実現に向けたエネルギー構造の変革に積極的に取り組むとのことです。
東京証券取引所では唯一の黄金株(株を持っていれば株主総会での拒否権を持つ株式で、経済産業大臣が所有)ですね。
経営理念は、
私たちは、エネルギーの開発・生産・供給を、持続可能な形で実現することを通じて、より豊かな社会づくりに貢献します。
ではここからは、(株)INPEXに対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
鉱業6社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 2兆6328億円(1位) |
売上高 | 2兆1645億円(1位) |
純利益 | 3217億800万円(1位) |
純利益率 | 14.9%(4位) |
総資産 | 7兆7656億円(1位) |
鉱業の中では純利益率が4位である以外はすべて業界1位。鉱業界で文句なしのトップ企業です。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「流動資産が流動負債の2倍以上であること」。 また、②「固定負債が純流動資産を超えていないこと」。
2023年12月期の決算短信によると、
流動資産:8384億1700万円
流動負債:5722億1200万円
固定負債:1兆6682億円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.47倍で基準未達、
②も、固定負債1.7兆円 > 純流動資産2662億円 で基準未達となり、
流動資産に対して流動/固定負債いずれの割合も高すぎますね。基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
INPEXの業績を確認すると、2020年が赤字ですね。原油価格の大幅な下落で大きな減損が発生したとのこと。残念ながら基準未達です。
年度 | 純利益 |
2015年3月 | 778億2000万円 |
2016年3月 | 167億7700万円 |
2017年3月 | 461億6800万円 |
2018年3月 | 403億6200万円 |
2019年3月 | 961億600万円 |
2019年12月 | 1235億5000万円 |
2020年12月 | -1116億9900万円 |
2021年12月 | 2230億4800万円 |
2022年12月 | 4984億5200万円 |
2023年12月 | 3217億800万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間のEPSが最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
過去10年のIR情報を確認すると、(直近の3年平均 – 最初の3年平均 ) / 最初の3年平均 × 100 = +695.9%となり、基準達成です。
年度 | EPS | |
2015年3月 | 53.29円 | |
2016年3月 | 11.49円 | 3年平均:32.1円 |
2017年3月 | 31.61円 | |
2018年3月 | 27.64円 | |
2019年3月 | 65.81円 | |
2020年12月 | 84.61円 | |
2021年12月 | -76.5円 | |
2021年12月 | 153.87円 | |
2022年12月 | 364.73円 | 3年平均:255.7円 |
2023年12月 | 248.55円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、毎年しっかり配当が出ており問題ありません。基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 13.75円/株 | 0.8% |
2011年3月 | 15円/株 | 0.95% |
2012年3月 | 17.5円/株 | 1.25% |
2013年3月 | 17.5円/株 | 1.4% |
2014年3月 | 18円/株 | 1.34% |
2015年3月 | 18円/株 | 1.36% |
2016年3月 | 18円/株 | 2.11% |
2017年3月 | 18円/株 | 1.64% |
2018年3月 | 18円/株 | 1.37% |
2019年3月 | 24円/株 | 2.27% |
2019年12月 | 30円/株 | 2.64% |
2020年12月 | 24円/株 | 4.32% |
2021年12月 | 48円/株 | 4.79% |
2022年12月 | 62円/株 | 4.44% |
2023年12月 | 74円/株 | 3.88% |
なお、株主優待は12月末の権利確定で400株以上で1000~3000円相当、800株以上で2000~5000円相当のQUOカードがもらえます。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PERが15倍以下であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは7.43倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBRが1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.54倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も 4.01 で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高2.2兆円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | △ | 2020年赤字 |
④収益成長性 | ◎ | +695.9% |
⑤配当 | ◎ | 利回り3.88%+優待あり |
⑥株価収益率 | ◎ | 7.43倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.54倍 |
財務状況、収益安定性の2項目において基準未達となり、
(株)INPEXは割安株に該当しません!
という結果になりました。
鉱業という業種の性質上、業界では圧倒的トップ企業ではあるものの、長期負債が大きいことと収益の安定性に乏しい点はバリュー投資という評価では厳しいと言わざるを得ません。
我が国及び世界のエネルギー需要に応えつつ、2050年ネットゼロカーボン社会の実現に向けたエネルギー構造の変革に積極的に取り組んでいく。
基盤事業である石油・天然ガス分野については、コアエリアへの選択と集中、天然ガスシフト、事業の強靭化とクリーン化の3点を基本戦略として、エネルギーの安定供給と気候変動への責任ある対応という二つの社会的責任を果たしていくとのこと。唯一の黄金株として責任は大きいですし、今後に期待ですね。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
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