こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである日本たばこ産業(株)【2914】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。
・バリュー投資の7つの基準に沿ったJTの評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・JTは割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。
日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株はどれか?
を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。
日本たばこ産業(株)【2914】 の基本情報
・設立年月日 1985年4月1日
・上場年月日 1994年10月27日
・業種 食料品
・特色 たばこ事業が中核。M&Aで海外たばこ事業拡大、加熱式の拡販も本腰。食品、医薬品事業も展開。
・資本金 1,000億円
・従業員数 (単独)5,819人 (連結)52,640人
・株価 3,110円(2023.8.11)
・単元 100株
・決算 12月末日
国内で唯一たばこ製造を手掛ける企業ですが、現在では医薬品や食品などの分野にも進出し、JTならではのブランド展開を行なっています。
国内たばこ事業では、日本市場において59.6%の売上シェアを誇っており、主要ブランドを中心に顧客のニーズに応えうる商品ラインナップを展開しています。「セブンスター」シリーズや「メビウス」シリーズは国内では高い人気を得ています。
缶コーヒーの「ルーツ」や「桃の天然水」などの飲料事業も印象深かったのですが、2015年に撤退されています。
お客様を中心として、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく
ビジョンには「JTならではの多様な価値を提供するグローバル成長企業であり続けること」を掲げ、このビジョンの実現に向けて、これまでの歴史・実績で培った強みである「強固な財務基盤」「卓越したブランド力」「人財の多様性」を競争力の源泉として活かしながら、事業活動に取り組まれています。
ではここからは、日本たばこ産業(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
食料品100社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 5兆5204億円(1位) |
売上高 | 2兆6578億円(1位) |
営業利益 | 6535億7500万円(1位) |
経常利益 | 5934億5000万円(1位) |
純利益 | 4427億1600万円(1位) |
営業利益率 | 24.6%(1位) |
純利益率 | 16.7%(1位) |
総資産 | 6兆9743億円(1位) |
負債 | 3兆246億円(1位) |
食料品の中で売上高、総資産も1位。純利益も1位であり、利益率も非常に高く、純利益率は驚異の16.7%で1位。日経225企業の食料品メーカーの中でダントツの存在です。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「流動資産が流動負債の2倍以上であること」。 また、②「固定負債が純流動資産を超えていないこと」。
2022年12月期の決算短信によると、
流動資産:2兆7235億円
流動負債:1兆5626億円
固定負債:1兆3686億円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.74倍で基準未達、
②も、固定負債1兆3686億円 > 純流動資産1兆1609億円 で基準未達となり、
流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も高いですね。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
JTの業績を確認すると、さすがたばこ産業。成長性はないものの、ものすごい安定感ですね。もちろんしっかり黒字であり、基準達成です。
年度 | 純利益 |
2014年3月 | 4279億8700万円 |
2014年12月 | 3629億1900万円 |
2015年12月 | 4856億9100万円 |
2016年12月 | 4216億9500万円 |
2017年12月 | 3924億900万円 |
2018年12月 | 3856億7700万円 |
2019年12月 | 3481億9000万円 |
2020年12月 | 3102億5300万円 |
2021年12月 | 3384億9000万円 |
2022年12月 | 4427億1600万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
過去10年のIR情報を確認すると、(直近の3年平均 – 最初の3年平均 ) / 最初の3年平均 × 100 = -12.8%となり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2014年3月 | 235.48円 | |
2014年12月 | 199.67円 | 3年平均:235.2円 |
2015年12月 | 270.54円 | |
2016年12月 | 235.47円 | |
2017年12月 | 219.1円 | |
2018年12月 | 215.31円 | |
2019年12月 | 195.97円 | |
2020年12月 | 174.88円 | |
2021年12月 | 190.76円 | 3年平均:205.0円 |
2022年12月 | 249.45円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
JTのIR情報を確認すると、毎年しっかり配当を出されており、基準達成です。ここ4年は利回りが6~7%もあり、すごいですね。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 5800円/株 | 1.67% |
2011年3月 | 6800円/株 | 2.26% |
2012年3月 | 10000円/株 | 2.15% |
2013年3月 | 68円/株 | 2.27% |
2014年3月 | 96円/株 | 2.96% |
2014年12月 | 100円/株 | 3% |
2015年12月 | 118円/株 | 2.64% |
2016年12月 | 130円/株 | 3.38% |
2017年12月 | 140円/株 | 3.86% |
2018年12月 | 150円/株 | 5.73% |
2019年12月 | 154円/株 | 6.33% |
2020年12月 | 154円/株 | 7.33% |
2021年12月 | 140円/株 | 6.03% |
2022年12月 | 188円/株 | 7.07% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PERが15倍以下であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは12.08倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBRが1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは1.43倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も17.27で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高2兆6578億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | 〇 | 問題なし |
④収益成長性 | × | -12.8% |
⑤配当 | ◎ | 利回り7.07% |
⑥株価収益率 | 〇 | 12.08倍 |
⑦株価純資産倍率 | 〇 | 1.43倍 |
財務状況と収益成長性の2項目で基準未達となり、
日本たばこ産業(株)は割安株には該当しません!
という結果となりました。
流動資産に対する負債の割合が高いことと、たばこ事業という成長性が厳しい事業である点がネックですね。
「質の高いトップライン成長」「コスト競争力の更なる強化」「基盤強化の推進」を基本戦略とし、それぞれ選択と集中の考え方を通じて実行していく。
以前は高配当の優良企業と評価されてきたJTでしたが、喫煙規制の強化などを背景にした紙巻きタバコ市場の縮小と、加熱式タバコへの出遅れから国内事業が振るわない上、成長ドライバーだった海外事業も新型コロナウイルスの感染拡大の影響で販売量が減少したこともあり、なかなか厳しい環境にあります。
今後は食品や医薬品事業など新たな収益源をしっかり育て、タバコ事業からの脱却を進めていくことは必須といえますね。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
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