こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである(株)トクヤマ【4043】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。
・バリュー投資の7つの基準に沿ったトクヤマの評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・トクヤマは割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。
日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株はどれか?
を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。
(株)トクヤマ【4043】 の基本情報
・設立年月日 1918年2月16日
・上場年月日 1949年5月
・業種 化学
・特色 半導体用シリコンの世界大手。塩ビ・苛性ソーダ、セメントなども。製品の大半を徳山で製造。
・資本金 100億円
・従業員数 (単独)2,459人 (連結)5,909人
・株価 2,408.5円(2023.9.6)
・単元 100株
・決算 3月末日
セメントやさまざまな化学製品を製品群に加え、最先端の半導体製造を支える電子工業用高純度薬品や放熱材料、メガネ関連材料や歯科器材などのライフサイエンス分野、廃棄物の再資源化を含む環境分野を主なフィールドとして事業を展開しています。
創業の事業であるソーダ灰、苛性ソーダおよび苛性ソーダ製造時に併産される塩素を原料としたメチレンクロライドなどの各種塩素誘導品を扱う化成品部門が売上・利益の筆頭で、次いで半導体ウエハーの原料となる高純度多結晶シリコンや、高機能放熱材料である窒化アルミニウム粉末など、産業基盤を根底で支える高品質の製品を取り揃える電子材料部門が続きます。
情報通信技術関連の製品に強く、IC製造工程におけるウェーハ表面の平坦化用シリカや、放熱材用の窒化アルミニウムなどは世界No.1シェアです。
化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する
ありたい姿には、以下4つを掲げ、
・マーケティングと研究開発から始める価値創造型企業
・独自の強みを磨き、活かし、新領域に挑み続ける企業
・社員と家族が健康で自分の仕事と会社に誇りを持てる企業
・世界中の地域・社会の人々との繋がりを大切にする企業
となることを目指されています。
ではここからは、(株)トクヤマに対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
化学100社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 1732億9300万円(45位) |
売上高 | 3517億9000万円(30位) |
営業利益 | 143億3600万円(47位) |
経常利益 | 147億8300万円(50位) |
純利益 | 93億6400万円(52位) |
営業利益率 | 4.1%(72位) |
純利益率 | 2.7%(74位) |
総資産 | 4763億8100万円(28位) |
負債 | 2323億7500万円(25位) |
化学の中で売上高は30位、総資産は28位。利益率は低めで、純利益率は2.7%の74位。国内大手化学メーカーの一社です。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「流動資産が流動負債の2倍以上であること」。 また、②「固定負債が純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:2536億8900万円
流動負債:882億4400万円
固定負債:1484億9500万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 2.87倍で基準達成、
②は、固定負債1484億円 < 純流動資産1654億円 で基準達成となり、
流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も低く、きれいな財務状況ですね。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
トクヤマの業績を確認すると、2015年、2016年が赤字ですね。特に2016年は1000億を超える大幅赤字。太陽電池用の多結晶シリコン生産に向け、マレーシアに2つの大型プラントを建設したものの、事業の前提が根底から崩れて投資回収が困難になったのが原因とのこと。残念ながら基準未達です。
年度 | 純利益 |
2014年3月 | 102億1800万円 |
2015年3月 | -653億4900万円 |
2016年3月 | -1005億6300万円 |
2017年3月 | 521億6500万円 |
2018年3月 | 196億9800万円 |
2019年3月 | 342億7900万円 |
2020年3月 | 199億3700万円 |
2021年3月 | 245億3400万円 |
2022年3月 | 280億円 |
2023年3月 | 93億6400万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
過去10年のIR情報を確認すると、(直近の3年平均 – 最初の3年平均 ) / 最初の3年平均 × 100 は 最初の3年がマイナスなので計算上∞%となり、基準達成です。
年度 | EPS | |
2014年3月 | 146.85円 | |
2015年3月 | -939.26円 | 3年平均:-746.0円 |
2016年3月 | -1445.48円 | |
2017年3月 | 749.86円 | |
2018年3月 | 283.18円 | |
2019年3月 | 493.26円 | |
2020年3月 | 287.05円 | |
2021年3月 | 351.1円 | |
2022年3月 | 389.08円 | 3年平均:290.1円 |
2023年3月 | 130.14円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でトクヤマのIR情報を確認すると、やはり大きな赤字が出た2015年,2016年とその後の2017年は無配、残念ながら基準未達です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 30円/株 | 1.16% |
2011年3月 | 30円/株 | 1.35% |
2012年3月 | 30円/株 | 2.33% |
2013年3月 | 15円/株 | 1.15% |
2014年3月 | 30円/株 | 1.78% |
2015年3月 | 0円/株 | 0% |
2016年3月 | 0円/株 | 0% |
2017年3月 | 0円/株 | 0% |
2018年3月 | 22円/株 | 0.65% |
2019年3月 | 50円/株 | 1.91% |
2020年3月 | 70円/株 | 3.35% |
2021年3月 | 70円/株 | 2.51% |
2022年3月 | 70円/株 | 4.07% |
2023年3月 | 70円/株 | 3.33% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PERが15倍以下であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは7.88倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBRが1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.74倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も5.83で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高3517億円 |
②財務状況 | 〇 | 問題なし |
③収益安定性 | × | 2015年,2016年赤字 |
④収益成長性 | ◎ | +∞% |
⑤配当 | × | 2015年,2016年,2017年無配 |
⑥株価収益率 | ◎ | 7.88倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.74倍 |
収益安定性と配当の2項目で基準未達となり、
(株)トクヤマは割安株には該当しません!
という結果となりました。
財務状況はきれいで、PER/PBRも十分低いのですが、2015年,2016年の赤字が痛いですね。仕方ありません。
電子先端材料・ライフサイエンス(健康)・環境事業を新たな成長事業と位置づけ、マーケティングと研究開発を基軸にした価値創造型企業へ成長を遂げる。
情報通信技術に必要となる素材で高い世界シェアを占める製品を持っている強みがあり、マレーシア事業での巨額損失後、事業戦略の再構築や財務体質改善を進めています。成長事業に位置付けている電子材料、ライフサイエンス、環境事業への重点投資が今後実を結ぶことに期待したいところです。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
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