こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである大平洋金属(株)【5541】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。
*大平洋金属(株)は2024年4月に日経平均株価の構成銘柄から除外されました。
・バリュー投資の7つの基準に沿った大平洋金属の評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・大平洋金属は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。
日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株はどれか?
を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。
大平洋金属(株)【5541】 の基本情報
・設立年月日 1949年12月1日
・上場年月日 1952年1月
・業種 鉄鋼
・特色 日本製鉄系。ステンレス原料のフェロニッケル製錬で世界上位級。ニッケル価格で業績変動。
・資本金 139億円
・従業員数 (単独)422人 (連結)468人
・株価 1,320円(2023.11.16)
・単元 100株
・決算 3月末日
鉄とニッケルの合金で、ステンレス鋼の原料となるフェロニッケル(ステンレス製品の主原料となる合金)の専業メーカー。鉱石を電気炉で製錬する過程で発生するスラグを加工した人工砂・石の製造や、低品位ニッケル鉱石からの製錬技術を生かしたごみ焼却灰などの再資源化システムの事業なども展開しています。
海外活動についても、フィリピンにおけるニッケル鉱山の開発事業、インドネシア、フィリピン及びニューカレドニアに対する技術支援、さらにフィリピンおよびジャカルタ事務所を開設し積極的に取り組んでいます。
社名の読みは「たいへいよう」で英文社名も「Pacific」ですが、大平洋金属であり太平洋金属ではありません。
人の力を活かし、地球の資源をより有用なるものとして提供し、人類社会の幸福に貢献する
世界に誇る製錬技術を自社の強みとして、経営の効率化と競争力で世界有数の基盤を確立することを目指されています。
ではここからは、大平洋金属(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
鉄鋼43社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 257億4200万円(22位) |
売上高 | 348億5200万円(28位) |
営業利益 | -125億8800万円(43位) |
純利益 | -50億2600万円(43位) |
営業利益率 | -%(-位) |
純利益率 | -%(-位) |
総資産 | 763億400万円(20位) |
負債 | 61億9700万円(38位) |
鉄鋼の中で売上高は22位、総資産は20位。直近が赤字であり、純利益は業界最下位。日経225の鉄鋼業の中では事業規模は小さめながら、フェロニッケルメーカーとしては国内最大手です。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「流動資産が流動負債の2倍以上であること」。 また、②「固定負債が純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:442億4700万円
流動負債:25億3900万円
固定負債:42億5200万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 17.43倍で基準達成、
②は、固定負債42億円 < 純流動資産417億円 で基準達成となり、
流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も低いですね。非常にきれいな財務状況です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2014年~2018年と2023年が赤字ですね。直近の2023年は中国の景気停滞などを背景としたステンレス製品の需要減少と減収、 原燃料価格や電力代の上昇で生産コストが上昇した影響とのこと。残念ですが基準未達です。
年度 | 純利益 |
2014年3月 | -61億4900万円 |
2015年3月 | -16億1100万円 |
2016年3月 | -383億6900万円 |
2017年3月 | -35億6100万円 |
2018年3月 | -8億1000万円 |
2019年3月 | 36億9300万円 |
2020年3月 | 6億2500万円 |
2021年3月 | 11億6200万円 |
2022年3月 | 113億6800万円 |
2023年3月 | -50億2600万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
過去10年のIR情報を確認すると、(直近の3年平均 – 最初の3年平均 ) / 最初の3年平均 × 100 は 計算上∞となり、基準達成です。
年度 | EPS | |
2014年3月 | -315.02円 | |
2015年3月 | -82.54円 | 3年平均:-787.9円 |
2016年3月 | -1966.16円 | |
2017年3月 | -182.5円 | |
2018年3月 | -41.52円 | |
2019年3月 | 189.32円 | |
2020年3月 | 32.04円 | |
2021年3月 | 59.58円 | |
2022年3月 | 582.88円 | 3年平均:128.3円 |
2023年3月 | -257.71円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、赤字だった2014年~2018年と2023年が無配ですね。基準未達です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 130円/株 | 1.67% |
2011年3月 | 170円/株 | 2.76% |
2012年3月 | 20円/株 | 0.44% |
2013年3月 | 40円/株 | 0.79% |
2014年3月 | 0円/株 | 0% |
2015年3月 | 0円/株 | 0% |
2016年3月 | 0円/株 | 0% |
2017年3月 | 0円/株 | 0% |
2018年3月 | 0円/株 | 0% |
2019年3月 | 55円/株 | 2.04% |
2020年3月 | 25円/株 | 1.59% |
2021年3月 | 20円/株 | 0.93% |
2022年3月 | 175円/株 | 4.24% |
2023年3月 | 0円/株 | 0% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PERが15倍以下であること」。
Yahooファイナンスによると、2024年3月期の収益予想が赤字のためPERは算出不可であり、基準未達です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBRが1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.37倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR はPERが算出不可のため基準未達です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高348億円 |
②財務状況 | ◎ | 文句なし |
③収益安定性 | × | 2014年~2018年,2023年赤字 |
④収益成長性 | ◎ | +∞% |
⑤配当 | × | 2014年~2018年,2023年無配 |
⑥株価収益率 | × | 算出不可 |
⑦株価純資産倍率 | △ | 0.37倍 PER×PBRが算出不可 |
収益安定性と配当、株価収益率/純資産倍率の4項目で基準未達となり、
大平洋金属(株)は割安株には該当しません!
という結果となりました。
財務状況は非常にきれいなんですが、2014年からの5年連続と2023年の赤字&無配が痛すぎますね。
総合力世界トップクラスのフェロニッケルメーカーを目指し、さらなる基盤強化、SDGsへの貢献及びカーボンニュートラル実現等を当社における重要課題と位置づけ、課題解決を軸とした事業構造を構築し、展開する。
フェロニッケルにおいて国内トップシェアを誇り、世界最大級の電気炉を用いて本社工場にて集中生産を行っており、今後は更なる生産効率化と海外展開を進め、全体最適生産体制の構築を目指とのことですが、懸念点はやはりフェロニッケル一本足であること。原料となるニッケル鉱石の価格変動リスクなどに業績が大きくされる不安定さは感じます。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
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