
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである(株)日本製鋼所【5631】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った(株)日本製鋼所【5631】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・(株)日本製鋼所【5631】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


(株)日本製鋼所【5631】 の基本情報
・設立年月日 1950年12月11日
・上場年月日 1951年6月
・業種 機械
・特色 火力・原子力向け鋳鍛鋼で世界大手。利益柱は樹脂製造・加工装置など産業機械にシフト。
・資本金 197億円
・従業員数 (単独)1,782人 (連結)5,658人
・株価 2,898円(2022.8.19)
・単元 100株
・決算 3月末日


日本製鋼所は、樹脂機械製品、プラスチック成形機等を核にITや防衛など多様な製品を擁する「産業機械事業」と、発電、石油精製、天然ガス等のエネルギー産業向けを中心とする「素形材・エンジニアリング事業」を2つの柱に、社会の最先端のニーズに応えるものづくり企業です。
世界有数の総合樹脂機械メーカーとして、川上の造粒機から二次加工用コンパウンド押出機、最終製品に近い成形加工を行う食品包装用フィルムや紡糸などの製造装置まで、プラスチック樹脂、合成繊維原料、合成ゴムなど多種多様な化学製品を生産・加工する各種機械装置を手がけています。
「産業機械事業」では、電子デバイス生産の高品質化・高効率化をサポートし、電子デバイスにかかわる製造装置を中心に製造・販売・保守サービスを行っています。5Gや自動運転技術など最先端技術に必要な半導体やディスプレイ、電子部品の生産に使用される装置を幅広くラインナップしています。
「素形材・エンジニアリング事業」では、素材の特性を最大限に引き出し、持続的社会の発展に貢献しており、100年以上にわたり、社会インフラや各種プラントで使用される特殊な鋼部材を開発・製造をされています。高度化・多様化する素形材へのニーズに対して、素材の特性を最大限に引き出すことを追求し、これまで培った技術や経験を活かし、設計・製作・施工・設置から保守点検・解析評価・補修まで、幅広いニーズに対応したソリューションを提供されてます。
経営理念は「顧客に驚きと感動を与え続ける」「社会との共生を図り、継続的に利益を実現する」「変わり続ける意識を持つ」。ビジョンとして「独創技術で変化を創り出し、社会の発展に貢献する企業」を掲げ、新しく創り出す技術で、社会の発展に貢献する「変化創造企業」となることを目指されています。
ではここからは、(株)日本製鋼所に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
機械229社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 2169億5500万円(26位) |
売上高 | 2137億9000万円(27位) |
営業利益 | 154億6000万円(31位) |
経常利益 | 167億7200万円(30位) |
純利益 | 1139億4800万円(26位) |
営業利益率 | 7.2%(118位) |
純利益率 | 6.5%(108位) |
総資産 | 3305億7800万円(30位) |
負債 | 1812億700万円(23位) |
機械の中で売上高は27位、総資産は30位。利益率は低めで、純利益率は6.5%の108位。鋳鍛鋼で世界大手のメーカーであり、事業規模は文句なしです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:2420億8900万円
流動負債:1283億8100万円
固定負債:528億2500万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.89倍で基準未達、
②は、固定負債528億2500万円 < 純流動資産1137億800万円 で基準達成となり、
よって、流動資産に対して流動負債の割合が若干高く、基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2015年~2017年が3年連続で赤字ですね。特に赤字の大きかった2016年は東日本大震災以降、原子力発電所向けの鋼材需要で回復が見通せず、室蘭製作所の固定資産を減損処理して特別損失を計上したとのこと。
日本製鋼所は原子炉の圧力容器向け部品など原発向けの鋼材を得意としており、海外の需要増加を見込んで原発向け設備の増産投資をしたものの、福島第1原発の事故によって事業環境が変わり、収益性が大きく低下したそうです。残念ですが基準未達です。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | 82億8100万円 |
2014年3月 | 55億2700万円 |
2015年3月 | -53億2700万円 |
2016年3月 | -166億円 |
2017年3月 | -49億6800万円 |
2018年3月 | 107億1200万円 |
2019年3月 | 199億6600万円 |
2020年3月 | 93億1000万円 |
2021年3月 | 68億9300万円 |
2022年3月 | 139億4800万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
IR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が38.0円、直近の3年平均が136.7円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = 259.4%となり、基準達成です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | 111.46円 | |
2014年3月 | 74.57円 | 3年平均:38.0円 |
2015年3月 | -71.93円 | |
2016年3月 | -226.61円 | |
2017年3月 | -67.6円 | |
2018年3月 | 145.76円 | |
2019年3月 | 271.68円 | |
2020年3月 | 126.66円 | |
2021年3月 | 93.75円 | 3年平均:136.7円 |
2022年3月 | 189.63円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、毎年しっかり配当が出ています。基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 60円/株 | 1.12% |
2011年3月 | 60円/株 | 1.84% |
2012年3月 | 50円/株 | 1.76% |
2013年3月 | 50円/株 | 2% |
2014年3月 | 25円/株 | 1.08% |
2015年3月 | 20円/株 | 0.79% |
2016年3月 | 25円/株 | 1.41% |
2017年3月 | 25円/株 | 1.39% |
2018年3月 | 37.5円/株 | 1.1% |
2019年3月 | 55円/株 | 2.7% |
2020年3月 | 45円/株 | 3.44% |
2021年3月 | 35円/株 | 1.33% |
2022年3月 | 57円/株 | 1.49% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは15.29倍であり、惜しくも基準未達です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは1.44倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も22.02でギリギリ基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高2137億円 |
②財務状況 | △ | 流動負債多い |
③収益安定性 | × | 2015年~2017年赤字 |
④収益成長性 | ◎ | +259.4% |
⑤配当 | 〇 | 利回り1.49% |
⑥株価収益率 | △ | 15.29倍 |
⑦株価純資産倍率 | 〇 | 1.44倍 |
財務状況、収益安定性、株価収益率、PER×PBRの4項目で基準未達となり、「(株)日本製鋼所は割安株に該当しない」という結果となりました。流動資産に対して流動負債が多く、2015年からの3年連続の赤字、株価もちょっと高いですね。
鋼の加工技術をコアに、戦前は兵器メーカー、戦後の高度成長期はインフラ・エネルギー、そして原子力発電所向けの部材から現在の産業機械と、主力ビジネスを変化させてきた日本製鋼所。社会が脱炭素を目指す中、再生可能エネルギーの供給を支えるインフラ提供に可能性を見出しているとのこと。
現在の主力となった産業機械系の事業でも、プラスチック以外の分野に進出することを計画しており、子会社の事業や、他社との共同開発に着手しているフォトニクス分野や液晶関連、半導体基板の製造装置など、同社にとって有望な分野は多い点は強みですね。引き続き今後の展開に注目です。
というわけで現時点では、
「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、
・コムシスホールディングス【1721】
・積水ハウス【1928】
・宝ホールディングス【2531】
・SUMCO【3436】
・東ソー【4042】
・日本ガイシ【5333】
の6社となりました。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




下のバナーをクリックいただけると励みになります!
コメント