
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである大平洋金属(株)【5541】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った太平洋金属(株)【5541】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・大平洋金属(株)【5541】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


大平洋金属(株)【5541】 の基本情報
・設立年月日 1949年12月1日
・上場年月日 1952年1月
・業種 鉄鋼
・特色 日本製鉄系。ステンレス原料のフェロニッケル製錬で世界上位級。ニッケル価格で業績変動。
・資本金 139億円
・従業員数 (単独)416人 (連結)460人
・株価 2,563円(2022.8.19)
・単元 100株
・決算 3月末日


大平洋金属は、1949年に日曹製鋼として日本曹達より独立して発足し、1970年に現社名となっています。社名の読みは「たいへいよう」で英文社名も「Pacific」ですが、大平洋金属であり太平洋金属ではありません。
鉄とニッケルの合金で、ステンレス鋼の原料となるフェロニッケルの専業メーカー。フェロニッケルとは、ステンレス製品の主原料となる合金のことで、例えばネジなどの建築資材や食事用のスプーンやフォークもフェロニッケルでできています。鉱石を電気炉で製錬して製造されますが、その製錬過程で発生するスラグを加工した人工砂・石の製造も行っています。また、低品位ニッケル鉱石からの製錬技術を生かしたごみ焼却灰などの再資源化システムの事業なども展開しています。
フェロニッケルに関しましては、予備還元用のロータリーキルンと、世界最大級のエルケム式電気炉を保有し、当社独自に開発した製錬技術の更なる効率化を目指し、品質の安定と向上を図っています。海外活動についても、フィリピンにおけるニッケル鉱山の開発事業、インドネシア、フィリピン及びニューカレドニアに対する技術支援、さらにフィリピンおよびジャカルタ事務所を開設し積極的に取り組んでいます。
経営理念は「人の力を活かし、地球の資源をより有用なるものとして提供し、人類社会の幸福に貢献する」。世界に誇る製錬技術を自社の強みとして、経営の効率化と競争力で世界有数の基盤を確立することを目指されています。
ではここからは、大平洋金属(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
鉄鋼44社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 451億8700万円(14位) |
売上高 | 571億2900万円(23位) |
営業利益 | 48億600万円(18位) |
経常利益 | 129億9900万円(11位) |
純利益 | 113億6800万円(10位) |
営業利益率 | 8.4%(15位) |
純利益率 | 19.9%(2位) |
総資産 | 871億5600万円(20位) |
負債 | 73億7500万円(38位) |
鉄鋼の中で売上高は23位、総資産は20位。利益率はかなりの高さで、純利益率は何と19.9%の2位。鉄鋼全体の中では小粒ですがフェロニッケルメーカーとしては国内最大手であり、事業規模は文句なしです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:547億7200万円
流動負債:34億1900万円
固定負債:39億5600万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 16.02倍で基準達成、
②は、固定負債39億5600万円 < 純流動資産513億5300万円 で基準未達となり、
よって、流動資産に対して流動/固定負債は驚異の少なさ、これまで評価した企業の中でダントツの健全性で、文句なしの基準達成です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2014年~2018年が5年連続で赤字ですね。特に赤字の大きかった2016年は中国経済の減速や原油安でエネルギー開発の需要が急減し、パイプライン鋼板に用いられるニッケルの国際市況は大きく低迷、国際ニッケル価格の下落でニッケル事業の事業環境が悪化し、投資した設備による利益の回収見通しが立たなくなったとして、減損損失を計上したとのこと。残念ですが基準未達です。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | 21億2600万円 |
2014年3月 | -61億4900万円 |
2015年3月 | -16億1100万円 |
2016年3月 | -383億6900万円 |
2017年3月 | -35億6100万円 |
2018年3月 | -8億1000万円 |
2019年3月 | 36億9300万円 |
2020年3月 | 6億2500万円 |
2021年3月 | 11億6200万円 |
2022年3月 | 113億6800万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
IR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が-96.3円、直近の3年平均が224.8円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 は計算上∞%となり、基準達成です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | 108.6円 | |
2014年3月 | -315.02円 | 3年平均:-96.3円 |
2015年3月 | -82.54円 | |
2016年3月 | -1966.16円 | |
2017年3月 | -182.5円 | |
2018年3月 | -41.52円 | |
2019年3月 | 189.32円 | |
2020年3月 | 32.04円 | |
2021年3月 | 59.58円 | 3年平均:224.8円 |
2022年3月 | 582.88円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、赤字だった2014年~2018年の5年間が無配ですね。基準未達です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 130円/株 | 1.67% |
2011年3月 | 170円/株 | 2.76% |
2012年3月 | 20円/株 | 0.44% |
2013年3月 | 40円/株 | 0.79% |
2014年3月 | 0円/株 | 0% |
2015年3月 | 0円/株 | 0% |
2016年3月 | 0円/株 | 0% |
2017年3月 | 0円/株 | 0% |
2018年3月 | 0円/株 | 0% |
2019年3月 | 55円/株 | 2.04% |
2020年3月 | 25円/株 | 1.59% |
2021年3月 | 20円/株 | 0.93% |
2022年3月 | 175円/株 | 4.24% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは23.07倍であり、基準未達です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.63倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も14.53で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高571億円 |
②財務状況 | ◎ | 問題なし |
③収益安定性 | × | 2014年~2018年赤字 |
④収益成長性 | ◎ | +∞% |
⑤配当 | × | 2014年~2018年無配 |
⑥株価収益率 | × | 23.07倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.63倍 |
収益安定性、配当、株価収益率の3項目で基準未達となり、「大平洋金属(株)は割安株に該当しない」という結果となりました。財務状況は非常にきれいなんですが、2014年からの5年連続の赤字、無配が痛すぎますね。
フェロニッケルにおいて国内トップシェアを誇り、世界最大級の電気炉を用いて本社工場にて集中生産を行っており、今後は更なる生産効率化と海外展開を進め、全体最適生産体制の構築を目指とのことですが、懸念点はやはりフェロニッケル一本足であること。原料となるニッケル鉱石の価格変動リスクなどに業績が大きくされる不安定さは感じます。
というわけで現時点では、
「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、
・コムシスホールディングス【1721】
・積水ハウス【1928】
・宝ホールディングス【2531】
・SUMCO【3436】
・東ソー【4042】
・日本ガイシ【5333】
の6社となりました。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




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