こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである東洋紡(株)【3101】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。
*東洋紡(株)は2023年4月に日経平均株価の構成銘柄から除外されました。
・バリュー投資の7つの基準に沿った東洋紡の評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・東洋紡は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。
日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株はどれか?
を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。
東洋紡(株)【3101】 の基本情報
・設立年月日 1914年6月26日
・上場年月日 1949年5月
・業種 繊維製品
・特色 液晶やコンデンサー向けフィルム、機能樹脂が柱。診断薬関連やエアバッグ用基布、水処理膜も。
・資本金 517億円
・従業員数 (単独)4,015人 (連結)10,885人
・株価 1,020.5円(2023.8.11)
・単元 100株
・決算 3月末日
日本初の民間大規模紡績会社「大阪紡」が、明治の実業家・渋沢栄一によって設立され、その後1914年に「三重紡」と合併して「東洋紡」となりました。フィルム、自動車用資材、環境関連素材、バイオ・医薬など、多くの高機能製品を提供する、”高機能製品メーカー”へと発展しています。
事業内容は、フイルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンス分野における各種製品等の製造、加工、販売。プラント・機器の設計、制作、販売。各種技術・情報の販売と、繊維だけでなく非常に幅広い事業を展開されています。
近年はフィルム関連に力を入れておられ、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャイン”などが非常に好調ですね。
順理則裕(理にしたがえば、すなわちゆたかなり)
創業者である渋沢栄一の「道徳経済合一説」の考えを踏まえた理念であり、「環境、ヘルスケア、高機能で、社会に貢献する価値を創りつづけるカテゴリー・リーダー」を目指されています。
ではここからは、東洋紡(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
繊維製品50社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 898億1500万円(7位) |
売上高 | 3999億2100万円(3位) |
営業利益 | 100億6300万円(7位) |
経常利益 | 65億9000万円(10位) |
純利益 | -6億5500万円(43位) |
営業利益率 | 2.5%(28位) |
純利益率 | -%(-位) |
総資産 | 5694億6500万円(3位) |
負債 | 3495億5000万円(3位) |
繊維製品の中で売上高、総資産とも3位。利益率は控えめで、営業利益率が2.5%で28位ながら2023年3月期は純利益は赤字。日本の大手繊維メーカーの一社です。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「流動資産が流動負債の2倍以上であること」。 また、②「固定負債が純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:2991億3300万円
流動負債:2025億円
固定負債:1649億8400万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.48倍で基準未達、
②も、固定負債1649億円 > 純流動資産966億円 で基準未達となり、
流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も高いですね。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
東洋紡の業績を確認すると、2019年と2023年に赤字がありますね。直近の2023年3月期は自動車減産や中国のゼロコロナ政策、原燃料価格の高騰などの影響によって減損損失を計上したとのこと。残念ながら基準未達です。
年度 | 純利益 |
2014年3月 | 81億5400万円 |
2015年3月 | 81億1700万円 |
2016年3月 | 101億5000万円 |
2017年3月 | 94億4400万円 |
2018年3月 | 130億4400万円 |
2019年3月 | -6億300万円 |
2020年3月 | 137億7400万円 |
2021年3月 | 42億200万円 |
2022年3月 | 128億6500万円 |
2023年3月 | -6億5500万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
過去10年のIR情報を確認すると、(直近の3年平均 – 最初の3年平均 ) / 最初の3年平均 × 100 = -37.9%となり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2014年3月 | 91.77円 | |
2015年3月 | 91.42円 | 3年平均:99.2円 |
2016年3月 | 114.33円 | |
2017年3月 | 106.38円 | |
2018年3月 | 146.93円 | |
2019年3月 | -6.79円 | |
2020年3月 | 155.12円 | |
2021年3月 | 47.3円 | |
2022年3月 | 144.75円 | 3年平均:61.6円 |
2023年3月 | -7.37円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
東洋紡のIR情報を確認すると、毎年しっかり配当を出されており、基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 35円/株 | 2.35% |
2011年3月 | 35円/株 | 2.92% |
2012年3月 | 35円/株 | 2.97% |
2013年3月 | 35円/株 | 2.19% |
2014年3月 | 35円/株 | 2.16% |
2015年3月 | 35円/株 | 2.16% |
2016年3月 | 35円/株 | 2.07% |
2017年3月 | 35円/株 | 1.81% |
2018年3月 | 40円/株 | 1.91% |
2019年3月 | 40円/株 | 2.81% |
2020年3月 | 40円/株 | 3.5% |
2021年3月 | 40円/株 | 2.81% |
2022年3月 | 40円/株 | 3.66% |
2023年3月 | 40円/株 | 3.85% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PERが15倍以下であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは22.47倍であり、基準未達です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBRが1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.48倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も10.79で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高3999億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 2019年,2023年赤字 |
④収益成長性 | × | -37.9% |
⑤配当 | ◎ | 利回り3.85% |
⑥株価収益率 | × | 22.47倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.48倍 |
財務状況と収益安定性/成長性、株価収益率の4項目で基準未達となり、
東洋紡(株)は割安株には該当しません!
という結果となりました。
配当と株価純資産倍率は良いのですが、負債が多い点と、赤字が複数年で出ているのは厳しいですね。
2022~2025年度を「つくりかえる・仕込む4年」と位置づけ、「安全・防災、品質の徹底」「事業ポートフォリオの組替え」「未来への仕込み」「土台の再構築」に取り組む。
フィルム事業およびライフサイエンス事業は、当社グループに優位性があり、市場の拡大が見込めるものとして「重点拡大事業」に位置づけ、中長期の成長拡大をめざして積極的な投資をしていくそう。
個人的には、繊維メーカーとして確かな技術をもつ企業であり、新製品の開発力が高い印象です。繊維からフィルムへの事業シフトも進んでいるようですし、技術開発力の高さを生かして今後更なる発展に期待ですね。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
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