
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである東洋紡(株)【3101】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った東洋紡(株)【3101】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・東洋紡(株)【3101】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


東洋紡(株)【3101】 の基本情報
・設立年月日 1914年6月26日
・上場年月日 1949年5月
・業種 繊維製品
・特色 綿紡績で発祥。各種フィルム、機能樹脂が収益柱。診断薬関連やエアバッグ用基布、水処理膜も。
・資本金 517億円
・従業員数 (単独)3,831人 (連結)10,503人
・株価 1,010円(2022.6.25)
・単元 100株
・決算 3月末日


東洋紡は、1882年5月3日、日本初の民間大規模紡績会社「大阪紡」が、明治の実業家・渋沢栄一によって設立され、その後1914年に「三重紡」と合併して「東洋紡」となりました。創業から約130年、幅広い分野でたくさんの技術を提供し続け、現在は、フィルム、自動車用資材、環境関連素材、バイオ・医薬など、多くの高機能製品を提供する、”高機能製品メーカー”へと発展しています。
事業内容は、フイルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンス分野における各種製品等の製造、加工、販売。プラント・機器の設計、制作、販売。各種技術・情報の販売と、繊維だけでなく非常に幅広い事業を展開されています。
創業者である渋沢栄一の座右の銘の一つである、「順理則裕(理にしたがえば、すなわちゆたかなり)」を企業理念とし、「環境、ヘルスケア、高機能で、社会に貢献する価値を創りつづけるカテゴリー・リーダー」を目指されています。
近年はフィルム関連に力を入れておられ、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”などが非常に好調で、売上・利益面でもフィルム・機能マテリアル事業が主力になっています。
ではここからは、東洋紡(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
繊維製品51社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 897億8500万円(7位) |
売上高 | 3757億2000万円(3位) |
営業利益 | 284億3000万円(3位) |
経常利益 | 230億9200万円(3位) |
純利益 | 128億6500万円(4位) |
営業利益率 | 7.6%(11位) |
純利益率 | 3.4%(22位) |
総資産 | 5177億7400万円(3位) |
負債 | 3206億2600万円(3位) |
繊維製品の中で売上高は第3位。総資産も第3位で日経225企業の繊維製品の中でもトップレベルの一社です。利益率は営業利益率が7.6%で業界11位とまずまずのレベル、それでも大手繊維メーカーの一社として事業規模は文句なしのレベルです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2022年3月期の決算短信では、東洋紡の流動資産は239,314百万円、流動負債は146,750百万円、固定負債は173,876百万円なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.63倍で基準未達、
②は、固定負債173,876百万円 > 純流動資産92,564百万円 で基準未達となり、
よって、流動/固定いずれの負債の比率も高く、基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
東洋紡の業績を確認すると、ここ10年で2019年3月に赤字があり、残念ながら基準未達です。火災事故によってエアバッグ用原糸の製造設備などが焼失したため、当該原糸の代替品調達に関連する費用など138億円を特別損失として計上したことが要因なんだそうです。突発要因なので事業の不振が赤字の原因というわけではないんですけど、ルールはルールということで。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | 76億3900万円 |
2014年3月 | 81億5400万円 |
2015年3月 | 81億1700万円 |
2016年3月 | 101億5000万円 |
2017年3月 | 94億4400万円 |
2018年3月 | 130億4400万円 |
2019年3月 | -6億300万円 |
2020年3月 | 137億7400万円 |
2021年3月 | 42億200万円 |
2022年3月 | 128億6500万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
東洋紡のIR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が89.7円、直近の3年平均が115.7円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = 29.1%であり、惜しくも基準未達です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | 85.78円 | |
2014年3月 | 91.77円 | 最初の3年平均:89.7円 |
2015年3月 | 91.42円 | |
2016年3月 | 114.33円 | |
2017年3月 | 106.38円 | |
2018年3月 | 146.93円 | |
2019年3月 | -6.79円 | |
2020年3月 | 155.12円 | |
2021年3月 | 47.3円 | 直近の3年平均:115.7円 |
2022年3月 | 144.75円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
東洋紡のIR情報を確認すると、毎年しっかり配当を出されており、基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 35円/株 | 2.35% |
2011年3月 | 35円/株 | 2.92% |
2012年3月 | 35円/株 | 2.97% |
2013年3月 | 35円/株 | 2.19% |
2014年3月 | 35円/株 | 2.16% |
2015年3月 | 35円/株 | 2.16% |
2016年3月 | 35円/株 | 2.07% |
2017年3月 | 35円/株 | 1.81% |
2018年3月 | 40円/株 | 1.91% |
2019年3月 | 40円/株 | 2.81% |
2020年3月 | 40円/株 | 3.5% |
2021年3月 | 40円/株 | 2.81% |
2022年3月 | 40円/株 | 3.66% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは6.91倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.46倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も3.18で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高3757億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | △ | 2019年赤字 |
④収益成長性 | △ | +29.1% |
⑤配当 | ◎ | 利回り3.66% |
⑥株価収益率 | ◎ | 6.91倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.46倍 |
財務状況と収益安定性/成長性の3項目で基準未達となり、「 東洋紡(株)は割安株には該当しない」という結果となりました。
突発の火災事故による損失で赤字になったことと、成長性は惜しいところですが、流動資産に対する負債の割合が高い点がネックですね。
個人的には、繊維メーカーとして確かな技術をもつ企業であり、新製品の開発力が高い印象です。繊維からフィルムへの事業シフトも進んでいるようですし、技術開発力の高さを生かして今後更なる発展に期待ですね。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。






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