こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである日本製紙(株)【3863】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。
*日本製紙(株)は2024年10月に日経平均株価の構成銘柄から除外されました。
・バリュー投資の7つの基準に沿った日本製紙の評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・日本製紙は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。
日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株はどれか?
を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。
日本製紙(株)【3863】 の基本情報
・設立年月日 1949年8月1日
・上場年月日 2013年4月1日
・業種 パルプ・紙
・特色 旧王子製紙のうち十條製紙を継承。製紙2位。家庭紙は「スコッティ」「クリネックス」ブランド。
・資本金 1,048億円
・従業員数 (単独)5,060人 (連結)15,959人
・株価 1,308円(2023.9.3)
・単元 100株
・決算 3月末日
主な事業は、紙、紙パック事業、液体用紙容器事業、ケミカル事業、エネルギー事業、アグリ事業、セルロースナノファイバー事業の6つに分けられます。この他にもレジャー施設の運営なども行っています。
王子ホールディングスに次ぐ業界第二位の製紙会社で、新聞紙や家庭用品はもちろん、様々な業界で使われる機能性用紙なども作っており、製品の数は多岐にわたります。
バイオマス燃料やセルロースナノファイバーの実用化などにも積極的に取り組んいる点にも好感が持てますね。
日本製紙グループは世界の人々の豊かな暮らしと文化の発展に貢献します
スローガンには、「木とともに未来を拓く」を掲げ、木とともに未来を拓く総合バイオマス企業として、これまでにない新たな価値を創造し続け、真に豊かな暮らしと文化の発展に貢献することを目指されています。
ではここからは、日本製紙(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
紙・パルプ25社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 1509億円(5位) |
売上高 | 1兆1526億円(2位) |
営業利益 | -268億5500万円(25位) |
経常利益 | -245億3000万円(25位) |
純利益 | -504億600万円(25位) |
営業利益率 | -%(-位) |
純利益率 | -%(-位) |
総資産 | 1兆6484億円(2位) |
負債 | 1兆2278億円(2位) |
紙・パルプの中で売上高、総資産とも2位。利益率は残念ながらかなり低く、特に昨年度は赤字です。それでも業界2位の企業です。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「流動資産が流動負債の2倍以上であること」。 また、②「固定負債が純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:6277億500万円
流動負債:5045億8500万円
固定負債:7467億5500万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.24倍で基準未達、
②は、固定負債7467億円 > 純流動資産1231億円 で基準未達となり、
流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も高いですね。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
日本製紙の業績を確認すると、2019年と2023年が赤字です。直近の2023年は印刷用紙などの需要低迷と原材料高で採算が悪化したとのこと。これ以前の2010年~2012年も赤字でかなり厳しいですね。基準未達です。
年度 | 純利益 |
2014年3月 | 227億7000万円 |
2015年3月 | 231億8300万円 |
2016年3月 | 24億2400万円 |
2017年3月 | 83億9900万円 |
2018年3月 | 78億4700万円 |
2019年3月 | -352億2000万円 |
2020年3月 | 142億1200万円 |
2021年3月 | 31億9600万円 |
2022年3月 | 19億9000万円 |
2023年3月 | -504億600万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
過去10年のIR情報を確認すると、(直近の3年平均 – 最初の3年平均 ) / 最初の3年平均 × 100 = -193.7% となり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2014年3月 | 196.67円 | |
2015年3月 | 200.26円 | 3年平均:139.3円 |
2016年3月 | 20.94円 | |
2017年3月 | 72.57円 | |
2018年3月 | 67.8円 | |
2019年3月 | -304.34円 | |
2020年3月 | 122.88円 | |
2021年3月 | 27.67円 | |
2022年3月 | 17.23円 | 3年平均:-130.5円 |
2023年3月 | -436.27円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
日本製紙のIR情報を確認すると、2011年から2013年の3年間と2023年が無配ですね。残念ながら基準未達です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 17.5円/株 | -% |
2011年3月 | 0円/株 | 0% |
2012年3月 | 0円/株 | 0% |
2013年3月 | 0円/株 | 0% |
2014年3月 | 40円/株 | 2.06% |
2015年3月 | 50円/株 | 2.77% |
2016年3月 | 60円/株 | 3% |
2017年3月 | 60円/株 | 3% |
2018年3月 | 60円/株 | 3.02% |
2019年3月 | 30円/株 | 1.31% |
2020年3月 | 40円/株 | 2.6% |
2021年3月 | 40円/株 | 3.02% |
2022年3月 | 40円/株 | 3.85% |
2023年3月 | 0円/株 | 0% |
なお、株主優待は3月末の権利確定で100株以上で自社グループ商品の詰め合わせがもらえます。相当額は不明ですが、1000円程度とするとでプラス 1%程度の配当があることになりますね。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PERが15倍以下であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは10.07倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBRが1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.38倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も3.83で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高1兆1526億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 2019年,2023年赤字 |
④収益成長性 | × | -193.7% |
⑤配当 | × | 2011~2013年,2023年無配 |
⑥株価収益率 | 〇 | 10.07倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.38倍 |
財務状況、収益安定性/成長性、配当の4項目で基準未達となり、
日本製紙(株)は割安株には該当しません!
という結果となりました。
流動資産に対して流動/固定負債が多いこと、度々赤字が出ていること、無配があることなど、課題が非常に多いですね。
「成長分野の収益力強化」「国内外のグラフィック用紙事業の立て直し」「GHG排出量削減の加速」を重点課題とし、パッケージや家庭紙、ケミカルなどの成長分野では、これまでに実施した投資の効果により収益力を向上させる。
紙・板紙の国内需要は近年急激に減退しているとのことで、今後も需要は戻らず、低位安定で推移すると想定されています。このような状況下で日本製紙は事業構造改革がなかなか進んでおらず、なかなか厳しい状況です。今後、バイオマス発電や家庭紙生産などへの転換が必要ですね。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
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