
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである三井化学(株)【4183】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った三井化学(株)【4183】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・三井化学(株)【4183】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


三井化学(株)【4183】 の基本情報
・設立年月日 1955年7月1日
・上場年月日 1962年10月
・業種 化学
・特色 三井系の総合化学メーカー。汎用の石化中心からヘルスケア、自動車向け等の機能材料へシフト。
・資本金 1,254億円
・従業員数 (単独)4,913人 (連結)18,780人
・株価 2,778円(2022.7.13)
・単元 100株
・決算 3月末日


三井化学は、明治45年、三井鉱山の石炭化学事業を発端に様々な化学事業に取り組み、これまで複数の会社との合併を経て、最終的には1997年に三井石油化学工業が三井東圧化学と合併し、現在の三井化学株式会社に至っています。
主な事業は、「ヘルスケア事業」「モビリティ事業」「フード・パッケージ事業」「基盤素材事業」の4つ。
ヘルスケア事業は、健康への関心が高まるなかで、健康・長寿社会の実現に向けたQOL向上に貢献する製品を提供しており、メガネレンズ事業では圧倒的な世界シェアを誇っています。
モビリティ事業は、自動車材料を中心に、あらゆる種類の人や物の移動手段を対象とした事業であり、エラストマーを核として機能性ポリマーなどを海外に展開しています。
フード・パッケージ事業は、高機能包装材料や環境配慮型の農薬を中心とした事業で、高強度、密封能力、低臭気など優れた性能のポリエチレンフィルム・シート事業を中心に展開されています。
基盤素材事業は、ウレタン、基礎化学品など幅広い分野で使用させる大型市況品をグローバルに生産・販売しています。
売上、収益面では基盤素材が約50%、モビリティが25%位、以下フード、ヘルスケアの順になっています。
「地球環境との調和の中で、材料・物質の革新と創出を通して高品質の製品とサービスを顧客に提供し、もって広く社会に貢献する」ことを企業グループ理念とし、化学の力で社会課題を解決し、多様な価値の創造を通して持続的に成長し続ける企業グループを目指されています。
ではここからは、三井化学(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
化学215社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 5478億2300万円(17位) |
売上高 | 1兆6126億円(6位f) |
営業利益 | 1473億1000万円(6位) |
経常利益 | 1412億7400万円(8位) |
純利益 | 1099億9000万円(6位) |
営業利益率 | 9.1%(82位) |
純利益率 | 6.8%(79位) |
総資産 | 1兆9349億円(9位) |
負債 | 1兆1278億円(8位) |
化学の中で売上高は第6位。総資産は第9位。利益率は低めで営業利益率は9.1%で業界82位、純利益率は6.8%で業界79位。大手化学メーカーの一社であり、事業規模は文句なしです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2022年3月期の決算短信では、三井化学の流動資産は1,033,445百万円、流動負債は706,569百万円、固定負債は421,274百万円なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.46倍で基準未達、
②は、固定負債421,274百万円 > 純流動資産326,876百万円 で基準未達となり、
よって、流動資産に対して、流動/固定負債の割合が高いですね。基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
三井化学の業績を確認すると、2013年と2014年に赤字がありますね。2014年は鹿島工場の閉鎖などに伴う事業構造改善費用として206億円の特別損失を計上したとのこと。残念ながら基準未達です。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | -81億4900万円 |
2014年3月 | -251億3800万円 |
2015年3月 | 172億6100万円 |
2016年3月 | 229億6300万円 |
2017年3月 | 648億3900万円 |
2018年3月 | 715億8500万円 |
2019年3月 | 761億1500万円 |
2020年3月 | 339億7000万円 |
2021年3月 | 578億7300万円 |
2022年3月 | 1099億9000万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
三井化学のIR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が-26.4円、直近の3年平均が346.0円なので、最初の3年がマイナスである以上、計算上は∞であり、一応基準達成です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | -39.87円 | |
2014年3月 | -125.51円 | 3年平均:-26.4円 |
2015年3月 | 86.21円 | |
2016年3月 | 114.74円 | |
2017年3月 | 324.05円 | |
2018年3月 | 358.38円 | |
2019年3月 | 385.6円 | |
2020年3月 | 174.52円 | |
2021年3月 | 298円 | 3年平均:346.0円 |
2022年3月 | 565.45円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲で三井化学のIR情報を確認すると、きっちり配当が出てますね。基準達成です。最近は配当利回りも向上している点も好感が持てますね。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 15円/株 | 1.06% |
2011年3月 | 30円/株 | 2.04% |
2012年3月 | 30円/株 | 2.39% |
2013年3月 | 30円/株 | 2.93% |
2014年3月 | 15円/株 | 1.19% |
2015年3月 | 25円/株 | 1.3% |
2016年3月 | 40円/株 | 2.13% |
2017年3月 | 70円/株 | 2.55% |
2018年3月 | 90円/株 | 2.68% |
2019年3月 | 100円/株 | 3.74% |
2020年3月 | 100円/株 | 4.88% |
2021年3月 | 100円/株 | 2.86% |
2022年3月 | 120円/株 | 3.88% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは5.37倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.75倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も4.03で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高1兆6126億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 2013年と2014年赤字 |
④収益成長性 | ◎ | +∞% |
⑤配当 | ◎ | 利回り3.88% |
⑥株価収益率 | ◎ | 5.37倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.75倍 |
財務状況と収益安定性が基準未達となり、「三井化学(株)は割安株に該当しない」という結果となりました。流動資産に対して負債が多く、赤字が2年出ているのは厳しいですね。
ここ最近はこれまで取り組んできた事業構造改革により、景気の影響を受けやすい基盤素材事業の割合を小さくする一方、収益性が高い機能化学品の事業拡大を進めており、事業ポートフォリオを変革させています。その結果、ここ最近は化学メーカーの中でも好調な業績を出しており、今後はかなり期待できそうです。
というわけで現時点では、「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、コムシスホールディングス【1721】と積水ハウス【1928】、宝ホールディングス【2531】、SUMCO【3436】、東ソー【4042】の5社となりました。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




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