
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである東邦亜鉛(株)【5707】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った東邦亜鉛(株)【5707】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・東邦亜鉛(株)【5707】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


東邦亜鉛(株)【5707】 の基本情報
・設立年月日 1937年2月
・上場年月日 1949年5月
・業種 非鉄金属
・特色 亜鉛・鉛の製錬大手。豪州鉱山買収で自社権益比率を拡大。環境・リサイクル、電子材料を併営。
・資本金 146億円
・従業員数 (単独)517人 (連結)1,051人
・株価 2,529円(2022.8.24)
・単元 100株
・決算 3月末日


東邦亜鉛は、創業時から非鉄金属のなかでも亜鉛にこだわり、亜鉛生産は国内シェアの2割、鉛生産は国内首位、銀生産は国内トップクラスの企業で、製錬、資源、環境・リサイクル、電子部材の4つのコア事業をベースにしています。
亜鉛製錬事業では、国内最新鋭の電解工場からつくられる高純度・高品質の亜鉛は、自動車、家電製品、構造物、建築材料の表面処理や部品として、社会基盤を支える重要な役割を担っています。
資源事業では、2010年に豪州の鉱山会社CBH社を完全子会社化し、亜鉛・鉛鉱石の自給率を大きく高め、中長期に亘り、鉱山ビジネスのグローバル展開と国内で製錬事業を展開する基盤を確立しています。
環境・リサイクル事業では、「電炉ダストからの酸化亜鉛の回収・製造方法」の企業化を実現して以来、非鉄金属のリサイクルに着目し、リーディングカンパニーとして高度な環境技術を開発しています。
電子部品事業では、金属素材メーカーとしての強みを最大限に活かし、エレクトロニクス製品に必要不可欠なインダクタ・トランスの製造販売を行っています。
経営理念は、
①顧客を満足させる良質の製品・サービスを提供する。
②株主の期待に応える業績をあげ、企業価値の増大を図る。
③従業員の生活を向上させ、働き甲斐のある会社にする
④地域の一員として認められ、地域にとって存在価値のある会社を目指す。
企業活動の遂行を通して、顧客、株主、従業員、地域など、関係する人々の利益の増進と企業の発展・向上と社会貢献を目指されています。
ではここからは、東邦亜鉛(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
非鉄金属35社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 312億200万円(18位) |
売上高 | 1242億7900万円(15位) |
営業利益 | 105億900万円(12位) |
経常利益 | 93億5300万円(13位) |
純利益 | 79億2200万円(13位) |
営業利益率 | 8.5%(11位) |
純利益率 | 6.4%(9位) |
総資産 | 1624億2500万円(13位) |
負債 | 1076億2700万円(13位) |
非鉄金属の中で売上高は15位、総資産は13位。利益率はまずまずで、純利益率は6.4%の9位。亜鉛、鉛、銀の国内トップクラスの企業であり、事業規模は文句なしです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:977億3700万円
流動負債:792億3500万円
固定負債:283億9100万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.23倍で基準未達、
②も、固定負債283億9100万円 > 純流動資産185億200万円 で基準未達となり、
よって、流動資産に対して流動/固定負債いずれの割合も高く、基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2013年,2016年,2019年,2020年が赤字ですね。特に赤字幅の大きかった2020年は亜鉛価格の下落や出資する海外鉱山の操業不振などによる減損損失が響いたとのこと。ちょっと赤字が多すぎますね。残念ながら基準未達です。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | -51億5600万円 |
2014年3月 | 16億7000万円 |
2015年3月 | 27億4300万円 |
2016年3月 | -162億2100万円 |
2017年3月 | 88億1400万円 |
2018年3月 | 103億7300万円 |
2019年3月 | -25億5000万円 |
2020年3月 | -183億6400万円 |
2021年3月 | 55億800万円 |
2022年3月 | 79億2200万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
IR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が234.8円、直近の3年平均が-121.1円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = -151.6%となり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | -379.52円 | |
2014年3月 | 122.98円 | 3年平均:234.8円 |
2015年3月 | 201.99円 | |
2016年3月 | -1194.51円 | |
2017年3月 | 649.07円 | |
2018年3月 | 763.9円 | |
2019年3月 | -187.8円 | |
2020年3月 | -1352.44円 | |
2021年3月 | 405.65円 | 3年平均:-122.1円 |
2022年3月 | 583.44円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、2020年が無配であり、残念ながら基準未達です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 70円/株 | 1.53% |
2011年3月 | 70円/株 | 1.8% |
2012年3月 | 70円/株 | 1.88% |
2013年3月 | 50円/株 | 1.32% |
2014年3月 | 50円/株 | 1.6% |
2015年3月 | 70円/株 | 1.85% |
2016年3月 | 50円/株 | 1.75% |
2017年3月 | 100円/株 | 1.83% |
2018年3月 | 125円/株 | 2.47% |
2019年3月 | 70円/株 | 2.24% |
2020年3月 | 0円/株 | 0% |
2021年3月 | 50円/株 | 2.09% |
2022年3月 | 75円/株 | 2.55% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは6.87倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.63倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も4.33で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高1242億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 2013年,2016年,2019年,2020年赤字 |
④収益成長性 | × | -151.6% |
⑤配当 | △ | 2020年無配 |
⑥株価収益率 | ◎ | 6.87倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.63倍 |
財務状況と収益安定性/成長性、配当性の4項目で基準未達となり、「東邦亜鉛(株)は割安株に該当しない」という結果となりました。流動資産に対して流動/固定負債の割合がいずれも高く、赤字が10年中で4年、無配もありますからね。これでは厳しいです。
非鉄金属業界にとっては、金属価格や為替相場の変動によるリスクを減らし、新たな成長商品・事業及び新市場を創出が重要であり、2022年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画では、社会的価値向上と経済的価値向上の両立を目指す統合思考経営を本格的に導入し、持続可能な会社へと変革を図るとのこと。
主要事業である製錬事業は、国内市場の成熟化に適応すべく、設備稼働効率アップや工程合理化、原料の多様化によるコスト競争力強化を図るとのこと。特に電力多消費型産業である亜鉛事業にとって、エネルギー資源価格の上昇に伴って今後も厳しい事業環境が続くとみられるため、その対策が急務です。
市場変動のリスクがどうしてもある事業ですので、在庫評価損益のマネジメント改善に取り組み、資源事業についても鉱山ポートフォリオの入れ替えを検討し、全体での市況リスクの適正化を進めるとのこと。その行方に注目したいところです。
というわけで現時点では、
「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、
・コムシスホールディングス【1721】
・積水ハウス【1928】
・宝ホールディングス【2531】
・SUMCO【3436】
・東ソー【4042】
・日本ガイシ【5333】
の6社となりました。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




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