
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである三菱マテリアル(株)【5711】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った三菱マテリアル(株)【5711】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・三菱マテリアル(株)【5711】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


三菱マテリアル(株)【5711】 の基本情報
・設立年月日 1950年4月1日
・上場年月日 1950年9月
・業種 非鉄金属
・特色 非鉄の総合首位。銅加工、電子材料、超硬工具、鉱山出資など多面展開。2022年春セメントを分離。
・資本金 1194億円
・従業員数 (単独)6,208人 (連結)23,711人
・株価 2,105円(2022.8.25)
・単元 100株
・決算 3月末日


三菱マテリアルは、三菱グループのルーツである九十九商会の炭鉱・鉱山業への進出を起源とし、150年以上にわたり日本の成長を支え、時代とともに変化する社会の要請に応じて、経営の多角化・事業構造の転換を続けながら発展しています。
社内カンパニー制をとっており、「高機能製品カンパニー」「加工事業カンパニー」「金属事業カンパニー」「環境・エネルギー事業カンパニー」の4つのカンパニーからなります。
銅加工事業では、銅精錬で製造した素材を原料に、自動車向け端子材やエアコン用銅管、半導体リードフレームなど様々な形状への製品加工を行っています。
電子材料事業では、圧倒的な開発力とものづくりで勝負できる現場力でエレクトロニクス事業向けにユニークで高付加価値の製品を提供しています。
加工事業では、自動車や航空機産業など最先端の材料や技術へのニーズに対応しながら、部品加工に不可欠な超硬製品を提供しています。
金属事業では、銅をはじめとする素材をグローバルに供給しており、都市鉱山とも呼ばれる電子機器などのスクラップから金、銀などの有価金属を回収するリサイクルシステムも確立し、資源の有効活用に積極的に取り組んでいます。
環境・エネルギー事業では、グループ全体の循環型ビジネスモデル強化を図り、マテリアルプレミアムの発現を進めています。
企業理念は、「人と社会と地球のために」。
価値観として、
①多様な個性の尊重とチームワーク
②誠実かつ迅速果敢な行動
③顧客・社会のニーズ実現への飽くなき挑戦 を制定し、
「ユニークな技術により、人と社会と地球のために新たなマテリアルを創造し、持続可能な社会に貢献するリーディングカンパニー」を目指されています。
ではここからは、三菱マテリアル(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
非鉄金属35社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 2759億9100万円(4位) |
売上高 | 1兆8117億円(2位) |
営業利益 | 527億800万円(5位) |
経常利益 | 760億8000万円(3位) |
純利益 | 450億1500万円(5位) |
営業利益率 | 2.9%(27位) |
純利益率 | 2.5%(28位) |
総資産 | 2兆200億円(3位) |
負債 | 1兆3776億円(2位) |
非鉄金属の中で売上高は2位、総資産は3位。利益率は低く、純利益率は2.5%の28位。非鉄金属メーカーとしては、総合首位であり、事業規模は文句なしです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:1兆2431億100万円
流動負債:9515億3700万円
固定負債:4261億4200万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.31倍で基準未達、
②も、固定負債4261億4200万円 > 純流動資産2915億6400万円 で基準未達となり、
よって、流動資産に対して流動/固定負債のいずれの割合も高く、基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、2020年に大きな赤字がありますね。市況悪化に加え、新型コロナウイルスによる経済活動の停滞を背景に、電子材料事業などの収益性が低下し工場や子会社で減損損失を計上したとのこと。残念ながら基準未達です。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | 369億4800万円 |
2014年3月 | 525億5100万円 |
2015年3月 | 561億4700万円 |
2016年3月 | 613億1600万円 |
2017年3月 | 283億5200万円 |
2018年3月 | 345億9500万円 |
2019年3月 | 12億9800万円 |
2020年3月 | -728億5000万円 |
2021年3月 | 244億700万円 |
2022年3月 | 450億1500万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
IR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が370.2円、直近の3年平均が-8.4円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = -102.3%となり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | 281円 | |
2014年3月 | 400.98円 | 3年平均:370.2円 |
2015年3月 | 428.49円 | |
2016年3月 | 468.02円 | |
2017年3月 | 216.44円 | |
2018年3月 | 264.14円 | |
2019年3月 | 9.91円 | |
2020年3月 | -556.34円 | |
2021年3月 | 186.71円 | 3年平均:-8.4円 |
2022年3月 | 344.56円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、毎年しっかり配当が出ています。基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2011年3月 | 20円/株 | 0.71% |
2012年3月 | 20円/株 | 0.76% |
2013年3月 | 40円/株 | 1.49% |
2014年3月 | 60円/株 | 2.05% |
2015年3月 | 80円/株 | 1.8% |
2016年3月 | 100円/株 | 3.14% |
2017年3月 | 60円/株 | 1.78% |
2018年3月 | 80円/株 | 2.5% |
2019年3月 | 80円/株 | 2.74% |
2020年3月 | 80円/株 | 3.61% |
2021年3月 | 50円/株 | 1.93% |
2022年3月 | 90円/株 | 4.2% |
なお、株主優待は3月末の権利確定で「三菱の金」など自社が扱う貴金属製品を優待価格で購入することができます。また、グループ会社が運営する観光坑道(佐渡金山、尾去沢鉱山、土肥金山、生野銀山)を無料で利用することができます。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは13.75倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.46倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も6.33で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高1兆8117億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | △ | 2020年赤字 |
④収益成長性 | × | -102.3% |
⑤配当 | ◎ | 利回り4.2%+優待あり |
⑥株価収益率 | 〇 | 13.75倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.46倍 |
財務状況と収益安定性/成長性の3項目で基準未達となり、「三菱マテリアル(株)は割安株に該当しない」という結果となりました。流動資産に対して流動/固定負債の割合がいずれも高く、赤字あり、ということで仕方なしです。
三菱マテリアルに限らず、非鉄金属業界は市況の変動や為替相場の動向などで、業績が大きくぶれることが経営課題であり、これを事業規模の拡大と多角化の両面の戦略でいかに安定させるかですね。様々な事業を有する中で、成長力のある事業ポートフォリオを作り上げていくかに注目したいと思います。
というわけで現時点では、
「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、
・コムシスホールディングス【1721】
・積水ハウス【1928】
・宝ホールディングス【2531】
・SUMCO【3436】
・東ソー【4042】
・日本ガイシ【5333】
の6社となりました。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




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