こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである(株)三井E&S【7003】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。
*(株)三井E&Sは2023年10月に日経平均株価の構成銘柄から除外されました。
・バリュー投資の7つの基準に沿った三井E&Sの評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・三井E&Sは割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。
日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株はどれか?
を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。
(株)三井E&S【7003】 の基本情報
・設立年月日 1937年7月
・上場年月日 1949年5月
・業種 輸送用機器
・特色 船舶用エンジン国内首位。クレーンも。持分会社にFPSOの三井海洋開発。造船・エンジ撤退。
・資本金 71億円
・従業員数 (単独)2,149人 (連結)5,972人
・株価 756円(2024.1.21)
・単元 100株
・決算 3月末日
造船、機械、プラントなどを手掛ける三井グループの重工業メーカー。太平洋戦争時には各種軍用艦の建造に携わり(現在は撤退)、現在では船舶用ディーゼルエンジンといった船舶分野だけでなく、発電・化学プラントといったエンジニアリング事業や、港湾クレーン、橋梁の建設など社会インフラ事業まで多岐にわたります。
旧社名は三井造船、三井E&Sホールディングス。2023年4月に事業持株会社体制に移行し、現社名に変更しています。傘下には、船舶・艦艇事業を引き継いだ事業会社である三井E&S造船、機械・システム事業を引き継いだ事業会社である三井E&Sマシナリー、エンジニアリング事業を引き継いだ事業会社である三井E&Sエンジニアリング、浮体式海洋石油・ガス生産設備(FPSO)で大きなシェアを誇る三井海洋開発を持ちます。
メタンハイドレートの実用化に向けた研究も進めており、他の重工業メーカーと比べ海洋分野に力を入れていることが特徴です。
エンジニアリングとサービスを通じて、人に信頼され、社会に貢献する。
ビジョン(目指す姿)には、「2030年までに、マリンの領域を軸に、脱炭素社会の実現と、人口縮小社会の課題解決を目指します」を定め、強みである製品の周辺まで広げたビジネスモデルを展開して事業の幅を広げ、持続的に安定した収益をあげる会社となることを目指されています。
ではここからは、(株)三井E&Sに対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
輸送用機器95社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 726億2800万円(35位) |
売上高 | 2623億100万円(31位) |
純利益 | 155億5400万円(17位) |
純利益率 | 5.9%(12位) |
総資産 | 4565億円(23位) |
輸送用機器の中で売上高は31位、総資産は23位。利益率はまずまず高く、純利益率は5.9%の12位。船舶用エンジンでは国内トップシェアです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「流動資産が流動負債の2倍以上であること」。 また、②「固定負債が純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:2126億2800万円
流動負債:2869億8000万円
固定負債:422億9300万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 0.74倍で基準未達、
②は、固定負債422億円 > 純流動資産-743億円 で基準未達となり、
流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も高く、基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、10年中4年も赤字がありますね。直近の2022年3月期は、持株会社である三井海洋開発で発生した損失と、インドネシアでの火力発電所土木建築工事で大きな損失が発生したとのこと。残念ながら基準未達です。
年度 | 純利益 |
2014年3月 | 428億5400万円 |
2015年3月 | 94億6300万円 |
2016年3月 | 75億9900万円 |
2017年3月 | 121億9400万円 |
2018年3月 | -101億3700万円 |
2019年3月 | -695億9900万円 |
2020年3月 | -862億1000万円 |
2021年3月 | 1億3400万円 |
2022年3月 | -218億2500万円 |
2023年3月 | 155億5400万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間のEPSが最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
過去10年のIR情報を確認すると、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = -111.6%となり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2014年3月 | 517.97円 | |
2015年3月 | 116.26円 | 3年平均:242.8円 |
2016年3月 | 94.02円 | |
2017年3月 | 150.87円 | |
2018年3月 | -125.42円 | |
2019年3月 | -861.08円 | |
2020年3月 | -1066.47円 | |
2021年3月 | 1.66円 | |
2022年3月 | -269.94円 | 3年平均:-28.2円 |
2023年3月 | 183.72円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、2018年以降5年連続で無配ですね。残念ながら基準未達です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 50円/株 | 2.15% |
2011年3月 | 40円/株 | 2.01% |
2012年3月 | 40円/株 | 2.78% |
2013年3月 | 30円/株 | 1.81% |
2014年3月 | 20円/株 | 0.92% |
2015年3月 | 20円/株 | 0.98% |
2016年3月 | 40円/株 | 2.38% |
2017年3月 | 30円/株 | 1.74% |
2018年3月 | 0円/株 | 0% |
2019年3月 | 0円/株 | 0% |
2020年3月 | 0円/株 | 0% |
2021年3月 | 0円/株 | 0% |
2022年3月 | 0円/株 | 0% |
2023年3月 | 3円/株 | 0.72% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PERが15倍以下であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは8.56倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBRが1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.61倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も5.22で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高2623億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 10年中5年赤字 |
④収益成長性 | × | -111.6% |
⑤配当 | × | 14年中5年無配 |
⑥株価収益率 | ◎ | 8.56倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.43倍 |
財務状況と収益安定性/成長性、配当の4項目で基準未達となり、
(株)三井E&Sは割安株に該当しません!
という結果となりました。
これだけ赤字が多ければ仕方がないですね。抜本的な経営の立て直しがないと当面は厳しそうです。
中核事業である舶用推進事業、港湾物流事業の強みをさらに強化し、サービスやソリューション提供へと収益モデルの変革を進める。
2023年4月には、事業と経営との距離を縮め、一体となることで戦略の立案・実行スピードを上げることを目的に純粋持株会社体制を解消し、当社100%出資の子会社である株式会社三井E&Sマシナリー及び株式会社三井E&Sビジネスサービスを吸収合併し、商号を「株式会社三井E&S」に変更しています。
今後の成長戦略推進及び経営効率化による三井E&Sグループの企業価値の持続的向上を図り、財務基盤の回復と収益体質の強化に取り組まれるとのこと。今後に期待ですね。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
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