
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである(株)三井E&Sホールディングス【7003】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った(株)三井E&Sホールディングス【7003】 の評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・(株)三井E&Sホールディングス【7003】は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


(株)三井E&Sホールディングス【7003】 の基本情報
・設立年月日 1937年7月
・上場年月日 1949年5月
・業種 輸送用機器
・特色 船舶用エンジン国内首位。クレーンも。持分会社にFPSOの三井海洋開発。造船・エンジ縮小。
・資本金 20億円
・従業員数 (単独)40人 (連結)6,449人
・株価 445円(2022.11.11)
・単元 100株
・決算 3月末日


三井E&Sホールディングス(旧社名は三井造船)は、造船、機械、プラントなどを手掛ける三井グループの重工業メーカーです。
太平洋戦争時には各種軍用艦の建造に携わり(現在は撤退)、現在では船舶用ディーゼルエンジンといった船舶分野だけでなく、発電・化学プラントといったエンジニアリング事業や、港湾クレーン、橋梁の建設など社会インフラ事業まで多岐にわたり、主に船舶、機械、エンジニアリングの3つの事業を柱としています。
傘下には、船舶・艦艇事業を引き継いだ事業会社である三井E&S造船、機械・システム事業を引き継いだ事業会社である三井E&Sマシナリー、エンジニアリング事業を引き継いだ事業会社である三井E&Sエンジニアリング、浮体式海洋石油・ガス生産設備(FPSO)で大きなシェアを誇る三井海洋開発を持ちます。またメタンハイドレートの実用化に向けた研究も進めており、他の重工業メーカーと比べ海洋分野に力を入れていることが特徴です。
企業理念は、「エンジニアリングとサービスを通じて、人に信頼され、社会に貢献します」、ビジョンには、「2030年までに、マリンの領域を軸に、脱炭素社会の実現と、人口縮小社会の課題解決を目指します」を定義されています。海洋開発に注力しようとする姿勢が感じられますね。
ではここからは、(株)三井E&Sホールディングスに対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
輸送用機器93社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 335億4500万円(40位) |
売上高 | 5793億6300万円(18位) |
営業利益 | -100億2900万円(92位) |
経常利益 | -257億4200万円(93位) |
純利益 | -218億2500万円(92位) |
営業利益率 | -%(-位) |
純利益率 | -%(-位) |
総資産 | 4197億6000万円(22位) |
負債 | 3393億600万円(18位) |
輸送用機器の中で売上高は18位、総資産は22位。利益率は昨年度が赤字のため算出不可ですが、船舶用エンジンでは国内トップシェアであり、事業規模は十分です。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2023年3月期の決算短信によると、
流動資産:2064億5000万円
流動負債:2840億6200万円
固定負債:552億4400万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 0.73倍で基準未達、
②も、固定負債552億4400万円 > 純流動資産-776億1200万円 で基準未達となり、
よって、流動資産に対して流動/固定いずれの負債の割合も高いですね。基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績を確認すると、10年中5年も赤字がありますね。直近の2022年3月期は、持株会社である三井海洋開発で発生した損失と、インドネシアでの火力発電所土木建築工事で大きな損失が発生したとのこと。残念ながら基準未達です。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | -82億700万円 |
2014年3月 | 428億5400万円 |
2015年3月 | 94億6300万円 |
2016年3月 | 75億9900万円 |
2017年3月 | 121億9400万円 |
2018年3月 | -101億3700万円 |
2019年3月 | -695億9900万円 |
2020年3月 | -862億1000万円 |
2021年3月 | 1億3400万円 |
2022年3月 | -218億2500万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
IR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が178.5円、直近の3年平均が-444.9円なので、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = -349.3%となり、基準未達です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | -98.76円 | |
2014年3月 | 517.97円 | 3年平均:178.5円 |
2015年3月 | 116.26円 | |
2016年3月 | 94.02円 | |
2017年3月 | 150.87円 | |
2018年3月 | -125.42円 | |
2019年3月 | -861.08円 | |
2020年3月 | -1066.47円 | |
2021年3月 | 1.66円 | 3年平均:-444.9円 |
2022年3月 | -269.94円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、2018年以降5年連続で無配ですね。残念ながら基準未達です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 50円/株 | 2.15% |
2011年3月 | 40円/株 | 2.01% |
2012年3月 | 40円/株 | 2.78% |
2013年3月 | 30円/株 | 1.81% |
2014年3月 | 20円/株 | 0.92% |
2015年3月 | 20円/株 | 0.98% |
2016年3月 | 40円/株 | 2.38% |
2017年3月 | 30円/株 | 1.74% |
2018年3月 | 0円/株 | 0% |
2019年3月 | 0円/株 | 0% |
2020年3月 | 0円/株 | 0% |
2021年3月 | 0円/株 | 0% |
2022年3月 | 0円/株 | 0% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは18.54倍であり、基準未達です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.43倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も7.97で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高5793億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 10年中5年赤字 |
④収益成長性 | × | -349.3% |
⑤配当 | × | 13年中5年無配 |
⑥株価収益率 | △ | 18.54倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.43倍 |
財務状況と収益安定性/成長性、配当、株価収益率の5項目で基準未達となり、「(株)三井E&Sホールディングスは割安株に該当しない」という結果となりました。これだけ赤字が多ければ仕方がないですね。抜本的な経営の立て直しがないと当面は厳しそうです。
2022年に策定した中期経営計画では、マリン事業を軸に、中核事業である舶用推進事業・港湾物流を「グリーン」と「デジタル」の切り口で発展させていくとのこと。
「グリーン」では、大型舶用低速エンジンや中小型舶用発電機関など、環境対応製品のエンジニアリングに注力し、カーボンニュートラル社会の実現を目指すそう。
「デジタル」では、海上輸送と港湾サービスの連携など、自社のサービス網とデジタル技術の掛け合わせによるサービス開発により、人口縮小社会への対応に必要なデジタル技術活用サービスを提供していくとのこと。
船舶の建設事業から撤退し、事業構造変革を進めている道半ばかと思いますので、今後に期待ですね。
というわけで現時点では、
「バリュー投資」の7つの基準をすべてクリアしているのは、
・コムシスホールディングス【1721】
・積水ハウス【1928】
・宝ホールディングス【2531】
・SUMCO【3436】
・東ソー【4042】
・日本ガイシ【5333】
・アマダ【6113】
・太陽誘電【6976】
・日東電工【6988】
の9社となりました。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。


以上、皆さんの参考になれば幸いです。




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