こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである日本郵船(株)【9101】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。
・バリュー投資の7つの基準に沿った日本郵船の評価
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・日本郵船は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。
日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株はどれか?
を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。
日本郵船(株)【9101】 の基本情報
・設立年月日 1885年9月29日
・上場年月日 1949年5月
・業種 海運業
・特色 海運で国内首位。総合物流企業化、傘下に郵船ロジ。コンテナ船は18年4月事業統合し稼ぎ頭に。
・従業員数 (単独)1,299人 (連結)35,194人
・株価 4,682円(2024.6.29)
・単元 100株
・決算 3月末日
商船三井・川崎汽船とともに日本の3大海運会社の一つで、運航船舶数規模及び連結売上高及び連結純利益で日本では1位、世界でも有数の海運会社
三菱の創始者(初代総帥)である岩崎弥太郎によって設立され、三菱重工業とともに三菱グループの源流企業にあたる三菱グループの中核企業で、国内・海外あわせて350以上の都市の港へ684隻の運航船舶が乗り入れています。
英称の「NIPPON YUSEN KAISHA」から「NYK LINE」という副称があります。
Bringing value to life.
ビジョンとして「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します。」を掲げ、その実現に向けて「誠意」「創意」「熱意」を社員共通の価値観として定めています。
ではここからは、日本郵船に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
海運業11社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 2兆1496億円(1位) |
売上高 | 2兆3872億円(1位) |
純利益 | 2286億300万円(2位) |
純利益率 | 9.6%(5位) |
総資産 | 4兆2547億円(1位) |
海運業の中で売上高、総資産とも1位。利益率も高く、純利益率は9.6%の5位、海運の国内トップ企業です。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「流動資産が流動負債の2倍以上であること」。 また、②「固定負債が純流動資産を超えていないこと」。
2024年3月期の決算短信によると、
流動資産:7035億1700万円
流動負債:7445億5400万円
固定負債:8168億5000万円 なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 0.94倍で基準未達、
②も、固定負債8168億円 > 純流動資産-410億円 で基準未達となり、
流動資産に対して流動/固定負債いずれの割合も高く、基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
過去10年の業績で確認すると、2017年と2019年に赤字がありますね。特に赤字幅の大きかった2017年はコンテナ船部門で船腹過剰状態が続き、運賃市況が低迷したほか、鉄鉱石、石炭などを輸送するドライバルク部門も市況の低迷から脱却できなかった影響で大きな損失が発生したとのこと。基準未達です。
年度 | 純利益 |
2015年3月 | 475億9100万円 |
2016年3月 | 182億3800万円 |
2017年3月 | -2657億4400万円 |
2018年3月 | 201億6700万円 |
2019年3月 | -445億100万円 |
2020年3月 | 311億2900万円 |
2021年3月 | 1392億2800万円 |
2022年3月 | 1兆91億円 |
2023年3月 | 1兆125億円 |
2024年3月 | 2286億300万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間のEPSが最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
過去10年のIR情報を確認すると、(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 = +1228.1%となり、基準達成です。
年度 | EPS | |
2015年3月 | 93.53円 | |
2016年3月 | 35.85円 | 3年平均:-131.6円 |
2017年3月 | -524.11円 | |
2018年3月 | 39.86円 | |
2019年3月 | -87.93円 | |
2020年3月 | 61.46円 | |
2021年3月 | 274.85円 | |
2022年3月 | 1991.25円 | |
2023年3月 | 1993.71円 | 3年平均:1484.4円 |
2024年3月 | 468.13円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
入手できる範囲でIR情報を確認すると、2017年が無配ですね。残念ながら基準未達です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 13.33円/株 | 1.08% |
2011年3月 | 36.67円/株 | 3.38% |
2012年3月 | 13.33円/株 | 1.54% |
2013年3月 | 13.33円/株 | 1.65% |
2014年3月 | 16.67円/株 | 1.67% |
2015年3月 | 23.33円/株 | 2.02% |
2016年3月 | 20円/株 | 2.76% |
2017年3月 | 0円/株 | 0% |
2018年3月 | 10円/株 | 1.4% |
2019年3月 | 6.67円/株 | 1.23% |
2020年3月 | 13.33円/株 | 3.11% |
2021年3月 | 66.67円/株 | 5.3% |
2022年3月 | 483.33円/株 | 13.48% |
2023年3月 | 520円/株 | 16.83% |
2024年3月 | 140円/株 | 3.44% |
なお、株主優待は3月末の権利確定で100株以上保有なら飛鳥クルーズの10%割引券がもらえます。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PERが15倍以下であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは8.77であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBRが1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.81倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBRも7.10で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 結果 | 備考 |
①事業規模 | ◎ | 売上高2.4兆円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 2017年と2019年赤字 |
④収益成長性 | ◎ | +1228.1% |
⑤配当 | △ | 2017年無配 |
⑥株価収益率 | ◎ | 8.77倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.81倍 |
財務状況、収益安定性、配当の3項目で基準未達となり、
日本郵船(株)は割安株に該当しません!
という結果となりました。
流動資産に対して流動/固定負債が多く、複数年で赤字があり、配当も不安定となるとちょっと厳しいですね。
3つの基本戦略である「ポートフォリオの最適化」「運賃安定型事業の積み上げ」及び「効率化と新たな価値創出」に沿った形で、既存事業の拡充に加えて情報技術・環境分野を中心とした新規事業の実現と成長分野への投資を実施していく
ボラタイルな事業環境や多様に変化する社会に対応すべく、ボラティリティへの耐性強化と事業成長・収益力向上に取り組まれるとのこと。確かに海運業は他業種と比べ、浮き沈みが非常に大きい印象ですので、まずは安定化が最優先ですね。今後に期待です。
これまで評価した結果を下の記事にまとめてますので、よろしければあわせてご覧ください。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
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