
こんにちは、なみです。
今回の記事では、日経225構成銘柄の1つである帝人(株)【3401】について、ベンジャミン・グレアムが提唱した「バリュー投資」の7つの基準に沿って評価してみました。


この記事でわかること
・バリュー投資の7つの基準に沿った帝人(株)【3401】 の評価
どんな会社?
事業規模は?
資産と負債のバランスは?
収益の安定性と成長性は?
配当はしっかり出てるのか?
株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)はどの程度か?
・帝人(株)【3401】 は割安株なのか?
あくまでIR情報などから機械的に評価したものですから、個人的な思いや先入観などは入っておらず、特定の企業を持ち上げたり卑下する意図はありませんのでご了承ください。日経225企業の中で、あなたが投資すべき割安株は何か?を探し当てるためのご参考にしてください。
ちなみに、これまで評価した結果一覧は以下のページにまとめていますので、よろしければあわせてこちらもご覧ください。


帝人(株)【3401】 の基本情報
・設立年月日 1918年6月17日
・上場年月日 1949年5月
・業種 繊維製品
・特色 合成繊維の大手。炭素繊維は世界2強の一角。医薬や在宅医療機器、樹脂、電子材料なども展開。
・資本金 718億円
・従業員数 (単独)2,890人 (連結)21,815人
・株価 1,398円(2022.6.26)
・単元 100株
・決算 3月末日


帝人は、日本初のレーヨンメーカーとして今から約100年前に創業しました。ベンチャー精神の強い企業であり、時代に合わせた製品を生み出すために最先端の研究開発を行っています。過去にも、新規分野への進出やグローバル展開を柔軟に行ってきました。現在は、高機能繊維・複合材料、電子材料・化成品、ヘルスケア、繊維製品・流通、ITなど多岐にわたる事業を手掛けています。
マテリアル事業とヘルスケア事業を二大事業とし、マテリアル事業ではアラミドや炭素繊維、フィルム・シートなどもっと快適で便利な暮らしと安全で安心できる社会を目指して高機能で高品質な製品を開発・提供されています。
ヘルスケア事業は医療用医薬品と在宅医療機器を両輪として、保険領域において事業を展開しており、治療分野だけでなく予防、介護分野まで事業領域を拡大しており、特にこの領域で高い利益を上げています。
ではここからは、帝人(株)に対してバリュー株投資の7つの基準に沿って評価していきます。
①事業規模
事業規模の評価基準は、「小型株をできるだけ除外する」。
日経225企業の一社ですので。事業規模は十分なのですが、一応業種の中での規模感を見ておきます。
繊維製品51社の中での各項目のランキングは以下の通りです。
時価総額 | 2685億8200万円(3位) |
売上高 | 9260億5400万円(2位) |
営業利益 | 442億800万円(2位) |
経常利益 | 496億9200万円(2位) |
純利益 | 231億5800万円(2位) |
営業利益率 | 4.8%(20位) |
純利益率 | 2.5%(24位) |
総資産 | 1兆2075億円(2位) |
負債 | 7427億7200万円(2位) |
繊維製品の中で売上高は第2位。総資産も第2位で日経225企業の繊維製品の中では東レに次ぐ2位の規模。利益率は営業利益率が4.8%で業界20位と低め、それでも国内最大規模の繊維メーカーとして事業規模は文句なしのレベルです。
②財務状況
次は財務状況。評価基準は、①「年内に現金になる資産(流動資産)が、年内に支払うべき負債(流動負債)の2倍以上であること」。 また、②「来年以降に支払うべき負債(長期負債=固定負債)が、流動資産からすべての負債を差し引いた純流動資産を超えていないこと」。
2022年3月期の決算短信では、帝人の流動資産は571,996百万円、流動負債は351,756百万円、固定負債は391,016百万円なので、
①は、流動資産 / 流動負債 = 1.63倍で基準未達、
②は、固定負債391,016百万円 > 純流動資産220,240百万円 で基準未達となり、
よって、流動/固定いずれの負債の比率も高く、基準未達です。
③収益安定性
収益安定性の基準は、「最低でも10年間赤字がないこと」 。
帝人の業績を確認すると、ここ10年で2013年3月、2015年3月、2021年3月に赤字があり、残念ながら基準未達です。2021年3月の赤字は、コロナ禍で航空機需要が低迷し、炭素繊維の販売が長期にわたって低迷する見通しとなり、多額の特別損失を計上することが要因とのことです。
年度 | 純利益 |
2013年3月 | -291億3000万円 |
2014年3月 | 83億5600万円 |
2015年3月 | -80億8600万円 |
2016年3月 | 310億9000万円 |
2017年3月 | 501億3300万円 |
2018年3月 | 455億5600万円 |
2019年3月 | 450億5700万円 |
2020年3月 | 252億5200万円 |
2021年3月 | -66億6200万円 |
2022年3月 | 231億5800万円 |
④収益成長性
収益成長性の基準は、「過去10年間のうち、直近3年間の1株当たり純利益(EPS)が最初の3年間より最低33%以上伸びていること」。
帝人のIR情報を確認すると、EPSの最初の3年平均が-48.8円、直近の3年平均が72.5円、最初の3年がマイナスなので(直近の3年平均 – 最初の3年平均) / 最初の3年平均 × 100 は ∞となり、基準達成です。
年度 | EPS | |
2013年3月 | -147.9円 | |
2014年3月 | 42.51円 | 最初の3年平均:-48.8円 |
2015年3月 | -41.14円 | |
2016年3月 | 158.15円 | |
2017年3月 | 254.91円 | |
2018年3月 | 231.26円 | |
2019年3月 | 232.39円 | |
2020年3月 | 131.63円 | |
2021年3月 | -34.71円 | 直近の3年平均:72.5円 |
2022年3月 | 120.58円 |
⑤配当
配当の基準は、「 20年連続で配当を出していること 」。
帝人のIR情報を確認すると、毎年しっかり配当を出されており、基準達成です。
年度 | 配当金 | 配当利回り |
2010年3月 | 10円/株 | 0.64% |
2011年3月 | 25円/株 | 1.34% |
2012年3月 | 30円/株 | 2.16% |
2013年3月 | 20円/株 | 1.83% |
2014年3月 | 20円/株 | 1.56% |
2015年3月 | 20円/株 | 0.98% |
2016年3月 | 35円/株 | 1.79% |
2017年3月 | 55円/株 | 2.62% |
2018年3月 | 60円/株 | 3% |
2019年3月 | 70円/株 | 3.83% |
2020年3月 | 60円/株 | 3.28% |
2021年3月 | 50円/株 | 2.62% |
2022年3月 | 55円/株 | 4.04% |
なお、株主優待はありません。
⑥株価収益率
株価収益率の基準は、「PER(株価収益率)」が15倍以下であること。
Yahooファイナンスによると、現在のPERは9.59倍であり、基準達成です。
⑦株価純資産倍率
株価純資産倍率の基準は、「①PBR(株価純資産倍率)が1.5倍以下で、②PER×PBRが22.5未満であること」。
Yahooファイナンスによると、現在のPBRは0.61倍であり、①のPBRは基準達成です。
②のPER × PBR も5.85で基準達成です。
まとめ
今回の結果をまとめると以下の通りとなります。
項目 | 評価結果 | 備考 |
①事業規模 | 〇 | 売上高9260億円 |
②財務状況 | × | 流動&固定負債多い |
③収益安定性 | × | 2013年,2015年,2021年赤字 |
④収益成長性 | ◎ | +∞% |
⑤配当 | ◎ | 利回り4.04% |
⑥株価収益率 | ◎ | 9.59倍 |
⑦株価純資産倍率 | ◎ | 0.61倍 |
財務状況と収益安定性の2項目で基準未達となり、「帝人(株)は割安株には該当しない」という結果となりました。
10年間で3度も赤字に陥っている点と、流動資産に対して負債が多い点が問題ですね。
マテリアル事業については炭素繊維などの不振に代表される収益性が大幅に低下しているようで、収益力の回復・向上が課題ですね。またヘルスケア事業については事業拡大に遅れが生じているとのことであり、今後しっかりと持続的な成長を実現し、業績を回復させていく必要がありそうです。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。






下のバナーをクリックいただけると励みになります!
コメント